サッカー女子W杯ドイツ大会で優勝した、女子日本代表(通称、なでしこジャパン)。その強さの秘密はどこにあるのか。藤原和博氏が佐々木則夫監督に迫る。
【佐々木】PKは水ものだから勝っても負けても仕方ない、思い切っていけ、と言っていたときに、澤が「あ、あたし……」と言いよどんだので、「うーん、じゃ澤はな、さっきミラクルシュート決めてくれたからな、おまえは一番後ろでいいぞ」と言って、ポトンと澤の番号をボードの下のほうに置いたら、みんながドッと沸いたんです。
【藤原】そしてPK戦を制して優勝。日本中を沸かせるフィーバーにつながりました。ここまでくるのに、どのような工夫をされたのでしょうか。11年の1月に出版された監督の本『なでしこ力』、私も拝読しました。この中で監督はW杯での優勝を予言されている。優勝する自信があったんですか?
【佐々木】2010年のアジア大会でアジアを制して少し自信もついてきたので、W杯でもいけるのではないか、とは思っていました。
【藤原】その自信の根拠としてイノベーションを起こす手法をいろいろと語っておられます。なでしこジャパンが決してあきらめなかったのは、そのあたりに秘密がありそうです。
私が、ひきつけられたのは戦略の立て方です。なるべく敵陣側でボールを奪って即攻撃に転じる、というチーム戦略をコンセプトとして採用するにあたって、きちんとデータを基にされている。自陣から攻撃を開始した場合のシュート到達率が20%であるのに対し、敵陣でボールを奪って攻撃に転じた場合のシュート到達率は50%、というデータです。ビジネスの世界で使われる「エビデンスデータ」の考え方を取り入れている。