若いころは経営理論を知識としてしか理解していなかったが、ビジネスでの経験を積んだ後では「腹落ちする」理論として理解でき、さらにその理論を実践の場で有効に活用できるのだ。

50代の学びについて菊地氏は「40代よりも知の領域を広げるべし」ともアドバイスする。

「今は不確実な時代といわれ、過去の成功体験が通じません。過去の事例を踏襲できないわけですから、当然、仮説を立てることが大事になってきます。すると仮説を立てるためのロジックが必要となります。それには知識の集約、習得が重要なポイントです」

不確実な時代だからこそ自社の中に答えがない場合が多い。そこで社内から業界、業界外へと知を求めていかなければならない。

知の領域を広げる方向は空間と時間です。私たちは外食がコアです。では、コンビニ業界はどうか、外食以外のたとえば自動車業界はどうかと空間的に広げていくのが一方向。他方、時間は未来へは行けませんから、過去にさかのぼってみます」

50代の学びは、時間と空間を広げてインプットを増やし、不確実性の時代のアウトプットにつなげていくことが問われている。

【小宮式】定年後に向けた資金作りの学び方

小宮氏は50代に入ったら出世の展望を見据えて勉強する対象を変えるべきと助言する。出世はそこそこだろうと予想する人にはお金の勉強を説く。

「50代も後半に差し掛かれば大半の方は子育てが終わり、住宅ローンも残すところ僅かのはずです。自分たちの老後のためにお金を貯め、少額の投資を経験してみることをおすすめします。退職金が入って初めての投資をすると大金を失う危険もあります」

まずは投資に関する本を読み、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)といった株価を評価するときの基本知識を身に付ける。そのうえで銘柄を選んで1~2年運用してみる。

投資の勉強をするときにやってはいけないことが1つある。それは「絶対儲かる!」といった類の本をテキストにしないことだ。

「投資の道に絶対はありません。ハイリスク・ハイリターンとは大きなリスクを取れば大きく返ってくることもある、ローリスク・ローリターンとはリスクを取らなければ低いリターンしか得られないという意味です。小さく投資しながら、それを実感してみるとよいでしょう」

50代に入ったら退職金の運用を視野に入れつつ、定年後のお金とのうまい付き合い方を覚えるのだ。