ただし50代でもそれとは違う勉強をしたほうがよいという層もいる。

「役員も見えてきた人の場合、お金は後からついてくるのでお金の勉強は最小限にとどめ、40代の勉強をより深めるべきです。マーケティングや会計などのテクニカルな知識は40代で身に付け、50代は主に経営を学び、人間力を高めるために学ぶとよいでしょう」

思考力がない者に経営は務まらない

さらに小宮氏は、経営に向かう人たちは「思考力」と「実行力」を徹底的に鍛え上げてほしいという。思考力がない者に経営は務まらないという小宮氏はその理由を以下のように説明する。

知の裾野を広げる!50代の勉強法

「経営者は複雑なことを複雑に考えなければなりません。それが思考力なのです。役員会など会議の場に出席すると、参加者の思考力の差がはっきりわかります。思考力の足りない人は、考えるための手札がないので思考停止になってしまうのです」

思考力を鍛えるために小宮氏がおすすめしているのが、仮説を立てるクセをつけることだ。なんでもスマホで調べてしまうのではなく、仮説を立てて推論する訓練で思考力は鍛えられるという。

これは前述の菊地氏に通ずるものがある。経営判断は決してグーグルで検索すれば答えが出てくるものではない。答えのない中で、合理的な仮説を立てて判断を下さなければいけないという点でコンサルタントと経営者の認識が一致している。自分の思考力だけが会社の行く末を左右するのだ。無論、年齢を問わず思考力は大切だが、会社経営の中核を担う50代は、特に思考力が求められるようだ。

他方、実行力に関しては2つの段階があるという。

「実行力を身に付けるためのファーストステップは、口にしたことはどんな些細な内容でも必ず行動に移すクセをつけること」

たとえば、飲み会の約束。仕事が忙しいからと直前にキャンセルしたり、行くと言ったのに面倒になって適当な理由をつけて断ったりするようなことを繰り返していると実行力は徐々に削がれていくという。しかし、このようなルールを課すと何も口にしなくなる人も出てくるという。

「そこで、セカンドステップは、思ったことはすべてやる。何かを食べたい、誰かと会いたいと思ったら、とにかく行動に移す。仕事はもちろん、日常生活の中でもこれを実践することで、実行力を鍛えることにつながります。これが簡単なようで難しい。実際に、活躍している人たちは、常に動き続けているので、動きが速い人が多いです」

50代は会社員人生がそれぞれに分岐しはじめる年代だ。そのまま定年退職に向かう人は定年後の暮らしを意識して資金作りを始めなければならない。一方、経営層に向かっていく人は、仮説を立てて思考する力に磨きをかける学びに時間を割きたい。