【菊地式】閃きにつながる読書術

「40代は自分が置かれた場で成果を出す時期」と話すのは、ロイヤルホールディングス会長の菊地唯夫氏だ。実績を上げるための勉強法をこう定義する。

成果につながる!40代の勉強法

「自分の近くのベストプラクティス(成功事例)を学びながら、20代、30代で身に付けたことを活かしていくのが40代というステージです。私自身を振り返っても、20代、30代に銀行や証券会社で学んだことをロイヤルで活用したのが40代です」

菊地氏は日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、ドイツ証券を経て39歳のときロイヤルに入社している。まさにロイヤルでの40代は、20代、30代で培った金融や経営の知識やノウハウを事業で活かす年代だった。

「ただし外食産業のことを新たに学ぶ必要があったので、ロイヤルの創業者や外食業界の優秀な経営者からベストプラクティスが何かを学んだのです」

とりわけ44歳でロイヤルの社長になると外食産業の経営者としての太い軸をつくるため、外食市場とそのプレーヤーを徹底的に調べ、学んだという。

「その蓄積と20代、30代で得た金融や経営の知見を組み合わせて成果を出すよう努めました」

身近なベストプラクティスを学ぶのは、自分の領域内での勉強だ。それと並行して菊地氏は40代に仕事に関係あるなしにかかわらず本を多読し、領域外からも貪欲に知を取り込んでいる。

「本を読むときにマーカーで印をしていく作業やノートにメモしていく作業を伴うと、やはり記憶に残りやすいと思います。後に、あの本に書いてあったことと自分の仕事に共通点があるなと閃くことがあります」

経営のヒントになる読書ノートは今や数十冊にのぼる。最近では『「民族」で読み解く世界史』でメモした帝国の性質から、外食産業の連合のあり方に示唆を受けた。

「ローマ帝国やモンゴル帝国、オスマントルコなど、過去に大きな帝国をつくり上げた国は共通して宗教に寛容です。翻って外食産業はなぜ連合が進まないかと考えたとき、完全に1つに融合すれば創業者の思いが消え、魅力のない店になってしまうことを懸念しているのでしょう。ならばテクノロジーや購買、物流といった個性に関係ない部分は共通化し、緩やかな連合を実現することも可能だろうと思うのです」

古の大帝国が領土を広げ、維持できた理由から、外食産業が連合しつつ、各チェーンが個性を失わない店舗展開を可能にする方法を探ってみる。このような思考法は自分の領域だけを深く掘り下げてばかりいては難しい。

本を「役に立ちそうだ」と手に取る必要はない。「面白そうだ」と思ったら気軽にページを開く。菊地氏は「本が本を呼ぶこともある」という。『「民族」で読み解く世界史』もそうだった。

「最初に書評か何かで興味を持ったのは『恐怖の地政学』でした。地政学のリスクを考えていると今度は『文明の衝突』が目につきました。そして文明同士の軋轢を過去の帝国はどう解消したのかを知りたくて『「民族」で読み解く世界史』に手を伸ばしたのです」