さらに難しいのが、新規のお客様の開拓です。既存のお客様なら電話番号やメールアドレスがわかりますが、非対面の営業で新しいお客様との接点をつくるのはそう簡単ではありません。紹介などで連絡先は入手できても、初めての会話が電話やオンラインの場合、すぐに打ち解けて話が弾むといった状況にはなりにくいでしょう。新規開拓の戦略についても、これから考えていく必要があります。

欧米は現在もほぼ100%が在宅勤務

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、社員の働き方も変わりました。在宅勤務の範囲を拡大し、その割合は緊急事態宣言下で本社勤務の7~8割、部署によっては9割に達しました。現在も約5割が在宅勤務を継続しています。海外は、ニューヨークやロンドンを含め、欧米は現在もほぼ100%が在宅勤務です(注:取材は2020年7月初め)。

野村HDでは、コロナ以前からオンライン業務を円滑に実施するためのデジタルプラットフォームを準備してきたので、在宅勤務への移行も速やかに実施できました。例えばトレーダーには、会社で使用するのと同じハイスペックなパソコンを自宅に届けて、本社のトレーディングルームと変わらないシステム環境を提供しています。どうしても在宅では難しい業務を担当する社員のみ出社とし、その場合もBCP(業務継続計画)サイトとして設けた別のオフィスに人員を分散しました。これらの対応は、感染防止策として現在も継続中です。

対面から非対面へ、出社からリモートワークへといった流れは、もはや不可逆的です。私はこれをポジティブに捉え、今回の変化を利用してわれわれの組織をさらに進化させたいと考えています。すでに営業部門、ホールセール部門やコーポレート部門などの各ラインを巻き込んだプロジェクトチームを立ち上げ、新しいビジネスのあり方や仕事の進め方を議論しています。

先日も各部門のヘッドとオンラインで話し合いましたが、「承認プロセスを見直してハンコが必要な書類を極力減らすべきだ」「定期券代の支給を廃止して出社ごとに交通費を精算する制度にし、その代わり新幹線の利用や遠方への移住を認めてはどうか」といったさまざまな意見が出されました。

また、国内の営業店舗のスペースの縮小も視野に入れています。これまでは大きなホールを備えた支店を持ち、そこにお客様を招いて株式などのセミナーを開催していましたが、新しい生活様式にシフトしていく中で大勢を一カ所に集めることは避けなくてはいけない。そこで、セミナーをオンライン中心に切り替え、店舗の効率化を進めることも選択肢に入ってきます。