年齢の上昇と共に社会経済的地位の上昇意欲は減る

世代ではなく年齢の問題かもしれないと考えて、mifで2011年から19年の20代の意識の変化を見ると、「人生の勝ち組になりたい」「金持ちになり、高級品を持ちたい」人はほぼ横ばいであり、減少はしていない。平成世代に社会経済的地位の上昇意欲がないとは言えないのだ。

むしろ年齢が上昇するにつれて、そうした社会経済的地位の上昇意欲が減退するのである。氷河期世代について11年から19年までの変化を見ると、「人生の勝ち組になりたい」「金持ちになり、高級品を持ちたい」人は、「とてもそう思う」「そう思う」ともに減少している。特に「人生の勝ち組になりたい」人は、27~38歳だった11年は52%で、19年に20~30歳である平成世代と同じだ。しかし氷河期の2019年は41%と大きく減少している。つまり氷河期世代は年齢の上昇と共に社会経済的地位の上昇意欲を失ってきたと言えるのである。

このように社会経済的地位の上昇意欲は、若いときは高いが年をとるにつれて低下すると考えるべきであり、特に平成世代が上昇意欲が低いとは言えないようである。

また「欲しいモノがすぐに思い浮かぶ」かという問いに対して「とてもそう思う」人は平成世代(男女計)では17%、氷河期世代では13%、バブル世代では9%であり、若い人ほど欲しいモノが思い浮かぶ傾向がある(図表2)。

3世代別・消費意欲の比較

若いから欲しいモノをまだ買えておらず、だから欲しいモノが思い浮かぶのは当然なのだが、とにかく平成世代に物欲がないとは言えないのである。

行きたい旅行先がすぐに思い浮かぶ

モノ消費ではなくコト消費の時代だとも言われるが、コト消費の典型である観光について、「行きたい『旅行先』がすぐに思い浮かぶ」かを聞いた質問では、「とてもそう思う」人は平成世代では20%であり、氷河期世代やバブル世代より多い。

特に平成女性では25%とそれが顕著であり、氷河期女性の20%、バブル女性の19%より多い。結婚、出産で旅行に行きにくくなるという思いがある女性は、若いときに行きたい旅行先が浮かびやすいのであろう。

このようにモノ消費についてもコト消費についても平成世代に欲がないとは言い切れない。

データは古いが17歳の高校生を2001年から13年まで調査したところ、「高い地位につく」「高い収入を得る」「競争に勝利する」という回答は増えているという研究もある(多田隈翔一「物の豊かさを求める高校生」、友枝敏雄編『リスク社会を生きる若者たち』大阪大学出版会、2015)。01年の17歳は1984年生まれであり13年の17歳は96年生まれだから、氷河期世代の最後と平成世代の後半という年齢差がある。その過程で社会経済的地位の上昇志向が高まったらしいのである。