債務超過はあくまでもB/S上のリスクであり、顕在化しなければ問題ないと考える人がいるかもしれない。しかし収入ダウンやライフスタイルの変化などで売却せざるをえない場合はどうなるだろう。債務超過では、たとえ売却してもローンを完済することはできない。

住宅の売買契約書にサインをすれば資産を得たという満足感が湧く。しかしB/Sに落とし込むと、大きなリスクを伴っていることは明らかだ。その問題を意識することが重要だろう。リスクを抑えるためには、債務超過の時期をなるべく短縮化させる必要がある。それには、頭金を多く用意することが重要だ。このケースの場合、頭金を2割用意していれば15年目に債務超過は解消され、債務超過の期間は7年短縮できる。

さらに繰り上げ返済で債務を縮小させるか、貯蓄で資産を増やせば、B/Sは一層改善できる。たとえば冒頭のケースでは、頭金を2割用意し、月に同額返済しつつ5万円ずつ貯蓄すれば、2年後には建物972万円、土地1600万円、貯蓄120万円で資産合計2692万円、負債の住宅ローンは2687万円となって債務超過が解消できる。

ベストは頭金を2割程度用意し、ローンを返済しながら貯蓄して資産を増やす(または繰り上げ返済で債務を減らす)ことだ。貯蓄できないようなギリギリの資金計画で、1000万円単位の買い物をすべきではない。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)