「ボーナス減額で住宅ローン返済が不安になってきた」という人が少なくない。負担感は収入の変化だけでなく、借入額の多寡にも左右される。そこで会計的な見地から、住宅ローンのリスクと正しい資金プランについてバランスシート(B/S)を使って考察してみる。
たとえば3500万円の戸建て住宅を頭金ゼロ、全額住宅ローン(金利2%、35年返済)で購入したとしよう。建物の価値が1500万円で、土地の価値は2000万円と仮定する。購入した瞬間のB/Sは、資産が3500万円、負債は3500万円でバランスする。
しかし「住宅は購入直後に2割値下がりする」といわれる。入居した途端に新築ではなくなることに加え、価格には分譲会社の利益や建設・販売コストなどが上乗せされているからだ。
したがって、購入直後の資産は建物1200万円、土地1600万円となり、計2800万円にダウン。対して負債(住宅ローン))は3500万円あり、購入直後に700万円もの債務超過に陥ることになる。
一般的に住宅購入には2割の頭金を用意すべきといわれているが、これは金融機関の多くが物件価格の8割を融資額の上限としていたためだ。しかし金融機関によっては物件価格と同額、あるいは購入時の諸費用(税金など)まで融資が受けられる例も少なくない。つまり頭金ゼロでも購入は可能なわけだが、債務超過額はその分大きくなる。5年後の資産価値は約2300万円(土地1600万円・建物約700万円。土地は購入後に下がって以降は同額で推移し、建物は毎年10%ずつ価値が下がると仮定)なのに対し、負債は毎月11万円強返済したとして3137万円。債務超過はさらに膨らみ、837万円となる。
住宅ローンでは返済当初は利息の返済に回る額が多く、5年間では約696万円返済したうち、元本は約363万円しか減っていない。それよりも建物価値の目減りが大きいため、債務超過が膨らむわけだ。
それでも年数が経つと建物価値の目減りは小さくなる一方で、逆に住宅ローンが減るペースは上がり、やがて債務超過が解消される時期もくる。このケースでは、ようやく22年目にして資産価値が1720万円、一方の負債は1590万円となって債務超過が解消され、ここで初めて安心感が得られる。