現在も影響が残る、GHGが仕掛けた心理戦

しかし、こうした見方は一次資料をもとに検討した場合、間違っているといわざるを得ません。代表例として「無条件降伏」について触れてみましょう。

「ポツダム宣言で無条件降伏を受け入れた」という認識を持っている人はことの他多くいます。たとえば、NHKが今年8月6日に放送した「NHKスペシャル『証言と映像でつづる原爆投下・全記録』」では、あいかわらず「日本は無条件降伏した」というナレーションが入っています。

しかし、冷静に考えてみてほしいのですが、そもそも無条件降伏などというものは、いかに当時といえどもありえません。そのようなことが許されれば、皆殺しすら正当化されてしまいます。近代の戦争でそのようなことは許されません。だからトルーマン大統領は無条件降伏を主張したものの、当のアメリカの軍人たちからも反対が出ました。

有名な玉音放送で、天皇は「国体を護持」できたことを明言しています。それが降伏条件の一つだったことは明らかです。

また、大東亜戦争という用語は、ほとんど右翼が用いる言葉のようなイメージを持つ人が多いため嫌われがちで、一般には太平洋戦争という言葉が使われています。しかし、前者は日本政府が当時閣議決定した名称ですから、この方が本来正しい。そもそも日中戦争は太平洋で行われていません。ところが、GHQがこの用語を禁じ、後者を強いたために現在では、こちらが一般的になったわけです。

ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)の中身

このように、さきほど述べたような歴史観(「日本は無条件降伏したので~」云々)は、戦後、GHQが日本に対して行った心理戦の影響が今なお残っていることを示しています。

この心理戦の中でも最も有名なのがウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)でしょう。

WGIPとは、日本人に極東国際軍事裁判(一般には東京裁判と呼ばれる)を受け入れさせるため、占領中にアメリカ軍が日本人に先の戦争に対して罪悪感を植えつけ、戦争責任を負わせるために行った心理戦のことです。その存在は評論家の江藤淳が『閉された言語空間』で明らかにしたことで有名になりました。

結果として、先の戦争において敗北した日本だけが悪をなした「戦争加害国」であるという「戦勝史観」が日本国内ではいまだに幅をきかせています。これを「自虐史観」と呼ぶ人もいます。

戦争を反省するのは決して悪いことではありません。大きな問題は、こうした見方が結果的に現在の我々にもなお悪い影響を与えていることです。