国民全体に「帰省は控えろ」と呼びかけてはいない

そういう視点で尾身会長の「提言」を見てみると、政府に対応を求める点を「断言」していないことが分かる。

「帰省する場合には、『基本的感染防止策(手指消毒やマスク着用、大声を避ける、十分な換気など』の徹底や三密を極力避けるとともに、特に大人数の会食など感染のリスクが高い状況を控えるなど、高齢者等への感染につながらないよう注意をお願いします」
「そうした対応が難しいと判断される場合には、感染が収まるまで当分の間、オンライン帰省を含め慎重に考慮していただきたいと思います」

読んでお分かりの通り、どこにも国民全体に「帰省は控えろ」と呼びかけてはいないのである。

唯一書かれているのは「そもそも、発熱等の症状がある方は、帰省は控えて下さい。感染リスクが高い場所に最近行った方は、慎重に判断して下さい」という当たり前の指摘だけだ。

さっそくこれを受けて、西村担当相は会見でこう述べている。

「前提として、お盆休みの帰省については一律に自粛を求めるものではない。故郷に帰って、お墓参りされることもあると思う。(中略)当然、いろんな親戚にも会うと思う。国としては分科会の提言に沿って国民の皆様にお願いをする」

これで、分科会のメンバーから「帰省を控えるよう政府が求めるべきだ」という声が出る道筋は封じ込められた、ということだろう。結局、政府としては、帰省について「一律に自粛は求めない」というお墨付きを専門家から得たということになるわけだ。

政治家も官僚も専門家も「責任逃れ」モード

結局、自己責任ということなのだろう。感染爆発を抑え込むことに政治家が強いリーダーシップを取るべきだと多くの国民が感じている中で、政治家も官僚も、専門家も「責任逃れ」モードなのだ。

安倍首相は8月6日、広島で50日ぶりとなる記者会見を開いた。国会閉幕翌日の6月18日に会見を開いて以降、ごく短時間の「ぶら下がり」インタビューを除いて、一切、国民に語りかけることをしてこなかった。新型コロナ関連は西村担当相に任せきりできたのだ。50日ぶりの会見も、幹事社が事前に提出した質問以外は受け付けないことで同行メディアと合意していたという。

政府が明確な対応を示さない中で、自治体にしわ寄せが及んでいる。愛知県は県独自の緊急事態宣言を出し、8月6日から24日までの間、大人数での会食や、県をまたぐ帰省など不要不急の行動・移動の自粛を求めることにした。

「Go To トラベル」キャンペーンの結果、大都市圏から旅行者が増えた沖縄県は、8月1日から15日まで県独自の緊急事態宣言を発出。不要不急の外出自粛や、飲食店の営業時間短縮、キャバレーやスナックなどの接待を伴う遊興施設の休業要請などに踏み切った。また、医療体制が脆弱な、離島などへの渡航自粛も打ち出している。

「今年のお盆は帰って来なくていいから」

地方の老親からそんな連絡を受ける都会の家族も多い。国が「自己責任だ」とばかりに明確な方針を示さなければ、感染を広げた場合のツケは個人が払わなければならなくなる。感染を恐れて、自分の判断で営業を「自粛」すれば、国は何の保証もしなくて済む。

国民が危機に直面している今、政府が何もできないとなれば、政治や官僚機構への信頼は地に落ちることになるだろう。

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