一定の陽性率と低い死亡率

2月~7月末までの東京都が公開したPCR検査数と陽性率、重症者数(図版作成=大和田潔)
2月~7月末までの東京都が公開したPCR検査数と陽性率、重症者数(図版作成=大和田潔)

これは2月から7月末までの東京都が公開しているPCR検査数と陽性率、重症者数です(本当は重症者数の縦軸はもっと小さい)。なにも加工せず並べました(※7)。このグラフを見ると、私は素直にこう思います。

1.PCR数は、現在は1日6000回近くで初期に比べると何百倍も行われている。
2.PCR陰性の人が圧倒的に多い(薄緑の部分が陰性)。
3.6月下旬から95%以上が陰性で、7月からは陽性率(オレンジの実線)は長期間5~7%の一定で推移。
4.6月末からPCR陽性患者が激増していると報道されて4週間以上経過するが、重症患者数は増加していない。初めからそもそも極めて少ない。
5.PCR検査数が少ない初期には陽性率の高さが注目され、検査数が多い現在は陽性者の数自体が注目されている。

そういうふうに思います。全体を知っている上で目立つところを引き抜くという作業は常に行われていますので、5の視点はとても重要です。そして、私はこの状況をみて日本では重症化しにくく、かつ現在の陽性率は一定なので、「新型コロナウイルスCOVID-19も常在季節性ウイルスの一つになりつつある」と考え、ホッとしています。海外の識者も、その可能性に言及しています(※8、※9、※10)

「東京全体の流行」は幻

発生状況はずっと軽微だ
図版作成=大和田潔
発生状況はずっと軽微だ

心配されていた墨田区の患者さんがいらしたときにお渡しした図です(※11)。東京スカイツリーや私の母校の都立両国高校があり、20万人が以上暮らしている墨田区も東京都と同じ傾向ですが、ずっと軽微です。5月から週別のPCR陽性者数(黒い棒グラフ)は数人もしくはゼロであり、陽性率(青い折れ線)も数%に過ぎません。

千代田区民の感染者数(画像=神田医師会配布資料)
千代田区民の感染者数(画像=神田医師会配布資料)

私たちのクリニックのある秋葉原は、千代田区にあり6万人が暮らしています。日本武道館近くの九段にはPCR検査施設が設置されています。神田医師会からの報告では、5月からの区民発症者はほぼゼロです。患者さんに医師会から届いた資料をお渡しすると皆さん驚かれています。きっと秋葉原やPCRセンターの近くなんかはたくさん陽性者がいるイメージなのだろうと思います。

患者さんが驚くということは、メディアが作り出した脳内のイメージと現実が解離しているからでしょう。このように東京は、発症者が少ない地域の方が多いのがファクトです。

どうやら最初にお示しした図の沢山の青い丸は伝えられていないようです。東京全体が汚染されているイメージは、メディアの作り出すアポフェニアや代表性ヒューリスティックを利用した幻(まぼろし)です。