脳特有のクセ「認知バイアス」

脳はとても小さな臓器なのに、処理しなくてはならない情報は無限です。放っておくと脳はパンクしてしまうので、全部を分析せずに短時間に勝手に処理を簡単にします。そこに認知バイアスやヒューリスティックと呼ばる脳特有のクセが生まれます。

認知バイアス(cognitive bias)は、いくつか知られています。新型コロナウイルスの報道ではアポフェニア〔少数の法則;law of small numbers(※4)〕や過剰一般化(※5)と呼ばれる手法がよく使われています。

犬の例では、まれな敗血症の話しをしました。報告があるのでウソではありませんが、確率的には極まれな話です。鳥による肺炎も同様です。

図で書くとこのようなものです。ポジティブな情報を青、そうでないものを紫とします。紫を赤にしただけでも目立つようになります。ポジティブな情報を減らすとさらに目立ちます。さらに、青のポジティブ情報をほとんど隠してしまうと絶望的に悪い状況に見えてきます。

ポジティブな情報を「青」、そうでないものを「紫」とする
図版作成=大和田潔
ポジティブな情報を「青」、そうでないものを「紫」とする

「一部」を「全部」にしてしまう

新型コロナウイルスの感染者数増大や、感染者が出現した県数の増加情報もその一つの例です。少数の重症者の中に時々しか発生しない合併症も全体数からみると非常に稀ですが、頻繁に報道されています。

こういう直感的な人間の認知バイアスは、人間の直感的な思い込みの見地からヒューリスティックスともよばれます。先程のものは、代表性ヒューリスティック(代表性発見的手法、representative heuristic)と呼ばれるものです(※6)

精度は今ひとつでも速度重視で、一部分を聞いて即座に直感的判断をする脳のクセです。有利なこともありますが、後でゆっくり全体を吟味してみると「あぁ、そうだったのか……」という苦い経験にもなります。

2020年8月現在、新型コロナが再度感染拡大と言われています。私は全く違った印象を持っています。なぜそう思うのか、公開されているけれど強調されていない点もゆっくり考察して、少数の法則の認知バイアスや代表性ヒューリスティックを減らして俯瞰してみましょう。