大浴場の混雑状況がスマホでわかる

この期間に準備をしたおかげで、対策は進みました。チェックインやチェックアウトの手続きはフロントではなく客室(星のや、界)。ビュッフェはやめ、施設によっては朝食をテークアウトして自然の中で楽しむブレックファスト ピクニックという形式もスタートしました。さらに3密回避策として、IoTを活用して大浴場の混雑状況がスマホでわかるWebサービスを開発。予約システム等々の開発の棚上げをいち早く決断して、社内のエンジニアをこちらに割り当てることができたので、20年6月1日にはリリースできました。

日本人による国内旅行
PIXTA=写真

もちろん、これで終わりではありません。私たちは1994年から顧客満足度調査を行っていますが、20年4月からコロナ対策についての項目も追加しました。顧客からのフィードバックを踏まえて、必要なところにさらに手を打っていくつもりです。

マーケティングも従来から変えていく必要があるでしょう。今回のコロナで、インバウンドはゼロになりました。ただ、日本の観光市場約28兆円のうち、インバウンドは約4.8兆円しかありません。これが止まる一方で、日本人の海外旅行約3兆円分が国内に戻ってくる見込みなので、そうなれば実質的には差し引き約2兆円を失うだけにとどまる可能性があります。

重要なのは、圧倒的多数を占める日本人による国内旅行です。ここが止まったままだと観光産業は壊滅する。国内旅行の需要をいかに戻すかが、生き残りの鍵になります。

では、国内旅行はどこから戻り始めるのか。それはマイクロツーリズム、つまり地元観光からです。3密回避は宿の中だけでなく移動中にも求められます。となると、移動手段は飛行機や新幹線より自家用車が好まれて、自家用車1~2時間圏内が選ばれる。

じつは60~70年代の国内旅行は、大半がマイクロツーリズム。当時は新幹線や高速道路が充実していなかったし、温泉旅館で贅沢な食事を上げ膳据え膳で食べたいという人が多かった。交通や自炊続きの状況はいまととてもよく似ていますから、ニーズはあります。

観光業界は、18カ月までの需要を下支えするために、もう1度マイクロツーリズム市場をターゲットにしていくべきです。まずは地元向けのプランをつくってプロモーションしていくことが大事。それからタウン誌や地域FMですね。昔はよく一緒に仕事をしていましたが、私たちも顧客が首都圏、関西圏、ニューヨーク、中国と広がって少し疎遠になっていた。地方の媒体の方々とはもう1度、連携が必要です。