いくつかの週刊誌報道によれば、「嵐」の櫻井翔は、自分の住んでいる高級マンションのほかに、母親たちが住むマンションを購入してやり、そのほかにもマンションを所有しているそうである。
櫻井を含めて、「嵐」のメンバーなら、年収も億を超えるだろう。そこまでいかなくても、そこそこの売れっ子なら1000万円程度のカネにつられて、退所を思いとどまるとは思えない。
かえって、事務所の苦しい懐具合を晒してしまったために、ここにいても将来はないと、見切りをつけるタレントが急増するのではないか。
凋落は公取委の「注意」から始まった
栄枯盛衰は世の習いだが、帝国とまでいわれたジャニーズ事務所が、ジャニー喜多川社長が亡くなってわずか1年で、ここまで崩壊するとは、私も考えていなかった。
姉のメリー喜多川氏の衰え、彼女の娘で現社長の藤島ジュリー景子社長の力不足、抱えているタレントたちの高齢化と、こうなる材料はいくらでもあった。
だが、私は、公正取引委員会がジャニーズ事務所に対して、元SMAPの3人がテレビに出るのを妨害した、独占禁止法違反の疑いがあると「注意」したことが凋落へのトリガーになったと考えている。
これが出されたのは、喜多川社長の死からわずか一週間後であった。公取委側は、出すタイミングを計っていたに違いない。
公取委は、ジャニーズだけではなく、事務所を退所すると、自分の本名で活動できなくなっている「のん」のケースや、他の事務所へ移るのを阻止するために、その人間の悪評を流したりする事務所を念頭に、独禁法上で問題となる恐れのある行為の具体例を示している。
前近代的な慣習が色濃く残り、タレントを事務所の所有物のように扱う芸能事務所の体質を変えろと、大ナタを振るったのである。
返す刀で、公取委の山田昭典事務総長(当時)が記者会見で、お笑い王国といわれる吉本興業が所属芸人と契約書を交わしていなかったことを問題視し、慌てた吉本は、所属芸人全員と契約を結ばざるを得なくなった。
これは、ジャニーズ事務所や吉本興業だけではなく、多くの芸能プロダクションに大きな衝撃を与えたが、それまで大手事務所のいいなりになってきたテレビ局も、大きな方向転換を迫られたのである。