奇岩「竹島」実効支配の実態
乗船客はその埠頭に降ろされるわけだが、韓国人乗船客の少なくない部分はあまりの船酔いの激しさに腰を下ろしてグロッキーとなり、十分な竹島観光などできないご様子である。とはいえ刹那の竹島観光といっても、単にフェリーから埠頭に接岸して、そのコンクリ護岸を50分ほど散策するだけのコースで、島の頂上に置かれた施設を見学することはできない(ただし、観光客向けに埠頭に設置された実効支配を主張するモニュメントは見学できる)。
竹島の第一印象は「奇岩」である。日本海の絶海に、2つの奇妙な、そそり立つ岩が唐突に海面から突き出しているといった様子で、不気味にすら感じる。テレビのニュース映像や報道写真で、上空から俯瞰して見る竹島はただのちっぽけな2つの島だが、いざ上陸して仰ぎ見ると想像以上に巨大で、恐ろしさすら覚える岩の塊である。
そこには樹木の1本も生えておらず、わずかに急峻な岩の斜面に雑草のようなものがへばりついているだけである。この急峻な崖の天辺に、韓国は実効支配を誇示する前掲各種施設を、まるで所狭しと設置している。どうやって造ったのだろう。並大抵の熱意では、こんな奇岩の頂上部分に人が定住できる構造物や循環施設を作ろうとは思わないだろう。
鬱陵島には韓国国内で最初にできた「独島記念館」があり、そこの展示ではいかに竹島固有の天然自然が多いかが喧伝されていたが、実際には海鳥の一羽、魚にすら出合うことなく、文字通り何もない「奇岩」以外の何物でもない。船酔いの悪感から半ば回復していない私だったが、使命感から「写真を撮らねば」の思いで、手にしたデジタルカメラで1000枚弱、竹島を撮影した。
ソウル市内には「独島ミュージアム」
さらには韓国人旅行客に頼んで竹島をバックに記念ポーズを取ってもらったりした。2時間半の高速船の地獄を経験した戦友、もはやここで日本人と判明しても強制送還されるような雰囲気ではない。実は鬱陵島の山頂にも「独島展望台」というのがあり、私は竹島上陸前、上陸が失敗した際の保険としてここに登頂したが、山頂で知り合った韓国人夫婦に日本人と打ち明けると、アイスクリームを奢ってもらったうえに、3人で記念写真まで撮ってくれた。実によき隣人である。
こうしてわずか1時間に満たない竹島上陸は終わった。帰路は、「頭を床につけるとだいぶ楽である」という韓国人客の助言で、床に寝た状態で耐えたが、確かに幾分はマシになった。鬱陵島から今度は東海市まで船で帰り、そこからバスでソウル市へ向かう。ソウル市内には韓国国内で2番目にできた近代的な「独島ミュージアム」というものがあり、こちらは先端技術が駆使され、アニメーションや3Dを使った懇切丁寧な説明があった。小学生と思しき団体客が見学していたが、この中で実際に竹島に行ったことがあるのは私だけではないかと思うと、何やら韓国人より「独島愛」を涵養した気分である。