――インバウンドへの影響はあるか。

【中村】インバウンド主体のバス会社は大きな打撃を受けたようだが、当社のインバウンドのお客様は全体の10%にも満たない。貸切バスのメーンのお客様は、修学旅行や企業の送迎など国内の利用だ。ただし主力の国内のお客様が外出できなかったので、バス業界全体のダメージは大きい。路線バスについても経済活動の自粛にともなう通勤での利用が減り、20年5月は運送収入が前年同月比52%減と聞いている。

観光客が消えてシャッター通りと化した東京・浅草寺の仲見世通り。
時事通信フォト=写真
観光客が消えてシャッター通りと化した東京・浅草寺の仲見世通り。

――社員への対応と、日本バス協会や東京バス協会としての国への要望は。

【中村】運転手は原則自宅待機してもらい、雇用調整助成金で雇用を維持している状態だ。とはいってもバスはエンジンをかけないと傷んでしまう。時々出社してもらってエンジンを動かし、車庫の周辺を走行して運転感覚を維持しつつ、ツアー再開に向けて車両点検などの準備を進めている。バス事業は整備などの固定費がかかるし、従業員の生活も守っていかなければならない。お客様がゼロの状態では、企業努力だけで何とかなるものでもない。国には助成金の増額を要請している。

――緊急事態宣言解除後の動きは。

【中村】20年6月13日から手始めに都内の観光名所を周遊するツアーを再開した。換気の良さをアピールする目的で、屋根のない2階建てバスを使い、1時間かけて東京タワーやレインボーブリッジを周遊。施設との調整が難しいので降車せず、車中から風景を眺めてもらうだけのツアーとした。

初日と翌日はあいにくの雨だったが、合羽を着用してもらい、2日間で50名ほどのお客様に楽しんでいただいた。また通常ならこのツアーは、新人のバスガイドのデビューコースとなるのだが、今回はベテランのバスガイドが担当。「約3カ月ぶりにお客様の喜ぶ顔を見られてうれしかった」とスタッフたちも笑顔を見せてくれた。

対策認定制度を国に陳情

――通常の観光バスの車内の「3密」や「ソーシャルディスタンス」の対策はどうしているのか。

【中村】お客様には、バス乗車時の検温と消毒液での手指の消毒、マスクの着用をお願いしている。また、乗車人数を減らして、席と席の間を取るなどして、3密の対策も取っている。車内の換気について気にする人も多いが、はとバスの車両には、内気や外気の汚れを感知し、内気循環と外気導入を自動で切り替える換気制御装置を導入している。走行中は空気を常に循環させ、清潔な空気を保っており、5分程度で新しい空気と入れ替わる。また、駐車中にも可能な限り換気を行っている。