アフターコロナに今すぐ売るべき不動産

マンションは今回のコロナ禍で、「密」の住まいとして、槍玉にあげられた住宅形態だ。一棟の建物に数十戸から、タワマンのように1000戸を超える住宅が「密に」詰まっている。コロナ禍が収まらない中で人気がなくなるのは当然だろう。

都市への「集中」はいたずらに「密」をつくることになる。
都市への「集中」はいたずらに「密」をつくることになる。(時事通信フォト=写真)

だが新型コロナウイルスに対するワクチンが開発され、感染症に対する恐怖から解放されるようになれば、多くの人々は感染症が再び猛威を振るうまではその恐ろしさを忘れ、マンションで暮らすことに不安を覚えなくなるだろう。東日本大震災後、一時は津波を恐れて湘南エリアの不動産を手放す動きがあったが、その後はどんどん人が戻り、今では不動産価格が値上がりするところが増えているのと同様だ。

問題は感染症という一過性のものに対する不安ではなく、むしろ積極的な意味でのライフスタイルの変化に着目すべきだ。会社ファーストという理由だけで選ばれてきた、都心に近いマンションは、コロナ禍が終息した後も、価格は戻るどころか、さらに下がり続けるリスクがある。なぜなら、都心部の会社に通勤することが減り、たとえば月に数回しか通わない生活を前提にすれば、一日の多くの時間を過ごすには、湾岸エリアや工場跡地に建設されたマンションなどは、生活環境という側面から評価できるところが少ないからだ。また最近頻発するゲリラ豪雨や台風などの災害に対する備えを考えても、これらの地域のマンションは、今後人々の選択肢から外れていく公算が大きい。

一方で、たとえば高輪や広尾といったブランドエリアのマンションは高層、低層に関係なく、価格を維持していくものと思われる。ブランドエリアの多くは高台に位置し、古来地震や台風などの災害にも強いエリアである。また常に国内外の投資マネーが流れ込むのもこのエリアの特徴だ。景気の悪化や経済情勢の低迷などで一時的に価格が下がったとしても、人々は常に安全・安心なところに住宅を求めるものであるし、投資マネーもそうした安定性を買うのである。

戸建て住宅はどうであろうか。戸建て住宅はマンションとは異なり、「密」になりにくい。「会社ファースト」の価値観で戸建て住宅を選ぶとすると、都心部の住宅はとても手を出せる水準の価格ではないために敬遠されてきたが、これからは多少の郊外であっても、通勤を前提にしないライフスタイルが多数派となれば、戸建て住宅が、今後値上がりすることも期待される。

だが、気を付けなければならないのは、郊外の戸建て住宅がすべて復活するわけではないことだ。利便施設がない、お年寄りだらけの街、交通手段が限られたニュータウンなど現代の生活環境にマッチしない街の住宅は、今後価格下落どころか、マーケットでの商品性を失うところも出てくるだろう。早いうちに手放すに如くはないだろう。

さらに地方にある親の実家はどうだろうか。いくらテレワークが進んできたところで、全くオフィスに通勤せずにフリーに働ける人はまだまだ少数派だ。親が存命のあいだに実家を売るのは難しいが、相続して管理に困っている場合にはできるだけ早く処分することが得策だ。

ただし、地方でも何らかのキャラクターのある街は今後、コロナ禍によって引き起こされた「集中」から「分散」への流れをとらえるところが出てきそうだ。人々が二拠点居住や、多拠点居住を志向する流れは今後ますます加速されるだろう。分散して居住することにあまり支障がないことに気付いた都会の優秀な人材が集まる街が地方でも生まれてくる可能性はおおいにある。そうした街の不動産は、あわてて売らずに、活用する方策を考えていくべきであろう。

要は目の前にある危機を、ただ恐れて逃げ回るのではなく、その後に控える新しい未来がどう展開していくかをいかに見極めるかである。東京だから○、地方だから×などといったステレオタイプの価値観の持続は、どうやらアフターコロナの時代には通用しなくなりそうだ。そして都内にあっても、いかに楽しく有意義に生活できるか否かによって街間格差が生じる。郊外や地方都市の中で、魅力を高めて生まれ変わるところが出てくるのがこれからの未来だ。住宅もそうした視点で選びたいものだ。

(写真=プレジデント編集部、時事通信フォト)
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