空気感染をも防ぐマスクはあるのか
生活者には、マスクに種類があることもあまり知られていないかもしれない。
マスクは「家庭用」「医療用」「産業用」に大別される。
家庭用の中に布マスク(ガーゼマスク)や不織布マスクがあり、医療用にはN95などの規格マスクがある。N95マスクはNIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格に合格したマスクで、最も捕集しにくいと言われる0.3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集できることが確認されている。厚生労働省では、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザや結核菌の対策指定品の一つとしている。
大雑把な表現をすると、家庭用マスクは“している本人の飛沫拡散予防”に力点が置かれている。だから、他人の飛沫を吸い込むことを防止できるものではない、という弱点がある。他方のN95マスクは、この“吸い込み予防”にも配慮されており、吸い込み口になりやすい顎などにフィットするよう、カップ型などが多い。
ただ、N95マスクの日常生活での使用は必ずしも想定されていない。微粒子の吸い込みを防止する分、息苦しく、日常の使用には不向きだからだ。フィットにも手技の取得がいる。
マスクメーカーの使命感と問題意識
しかし、だからといって、N95マスクの利用価値がないというわけではない。入院すべき患者の受け入れが困難になると、自宅での療養が余儀なくされるが、その際、家族が看護する必要に迫られたときに活躍するからだ。あるいは、限られた人との接触機会にも用いられるだろう。2009年に厚生労働省「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」がまとめたガイドラインでも、「家族内で新型インフルエンザに感染した者を世話する等、感染者と濃厚な接触が避けられない場合は、医療従事者以外の者も、N95マスクを使用することは、適切な教育・訓練が行われることを前提として今後も検討する価値があると思われる」と記している。
だからこそ、医療用マスクであるN95マスクにも、実は市販品がある。日常生活での使用が想定されていないN95規格マスクがドラッグストアなどでも流通しているのは、市販マスクメーカー間に、未知の強毒型新型インフルエンザパンデミック時にどのように貢献するかという使命感と問題意識があるからだ。