しつけの目的は「自分の心の声」を聞くこと
ユダヤ人はしつけをしないのかと言えば、そんなことはありません。ユダヤ人のしつけで特徴的なのは、子どもに「物事の善悪を考えさせる」ことです。子どもが「自分の心の声」に耳を傾けるように導くのです。親に怒られるから行動を抑制するのではなく、自分の心が「それはよくないことだ」と言っていないか、子ども自身の倫理観や道徳心に問いかけさせるのです。
ユダヤ教では、人間の心には「いい衝動」と「悪い衝動」の二つがあると考えています。だから子どもが悪い行動をするのは当たり前であり、悪い行動を経験させることによって自分を律したり、自分の衝動をコントロールすることを教えるのです。例えば、多くの子どもにとって、走ってはいけない場所で走り回るのは楽しいことです。でも人にぶつかってケガをさせたり、ものを壊したり、転んで痛い目に遭えば、「次は走るのをやめよう」と自制することを学びます。
自分で決めた行動の結果から学ばせる
自分で決めて行った行動には結果がつきまとうことを、一つひとつの経験を通して教えていくのがユダヤ式のしつけです。「親から叱られるから」「先生から叱られるから」という理由で行動を抑制するのではなく、自分の心の声が「それはよくないことだ」と言っているから自制する。子どもに行動させて、自らの体験から「いい・悪い」を学ぶことを教えるのです。
ユダヤ人の子育ての根底にあるのは「子どもへの敬意」です。一方的に命令したり、威圧したり、親の価値観を押しつけたり、親の思い通りに子どもをコントロールしたりすることは一切ありません。子どもを一人前の独立した人格として尊重して扱う、人生の先輩である親が子どもを尊敬することで、子どもも親を信頼し、尊敬し、親の言葉に耳を傾けるようになるのです。