長生きしているのは、やせている人より小太り

厚生労働省が推奨する特定健康診査いわゆる「メタボ健診」では、肥満度を表す指数であるBMI値が25以上だと肥満と判定され、保健指導の対象となります。しかし、国立がん研究センターの調べによると、日本におけるBMIと総死亡率の関係では男性の総死亡率がいちばん低いのは25~27なのです。逆に、21未満だと総死亡率が極端に高くなっています。つまり、長生きしているのは、やせている人より小太りの人のほうなのです。

肥満指数・BMIと死亡リスクの関係(全死亡)

これはよく考えれば当たり前のことで、栄養状態がいいほうが細胞膜も血管も骨も丈夫に決まっています。反対にファッションモデルのようなやせ型の体形だと、脳の血管が切れやすくなるなど、結果的に短命にならざるをえない。だから、やせている人はいますぐ糖質制限などのダイエットと手を切り、きちんと食事をとって体重を増やすこと。このほうがマスクや手洗いよりも、よっぽど効果的な新型コロナウイルス対策だといえます。

なお、BMI値25以上が肥満というのは、日本肥満学会が定めた基準ですが、世界保健機関(WHO)の判定基準は、BMI30以上です。もちろん日本人でもBMI30以上のビヤ樽型の人は正真正銘の肥満ですから、長生きしたければBMIが30未満になるようダイエットに励んでください。

ダイエットの一環として取り組まれている運動も注意が必要です。運動不足は体調不良を招きますが、かといってやりすぎると逆効果。筋肉質で引き締まったスポーツマン体形はいかにも健康的で、ウイルスなどものともしないように見えますが、実は体脂肪が少なすぎると細胞膜やホルモンの原料が不足しがちなうえに、栄養の貯蔵もできないので、感染症やがんにかかりやすい。体育学部出身者はそれ以外の学部を出た人よりも6歳短命という、大妻女子大学の調査結果もあります。

トレーニングをする動物なんて人間だけです。つまり鍛えるというのは異常なことであって、なるべくやらないほうがいい。健康のためには1日30分、週に数度、速足をまじえながら散歩する程度で十分なのです。

近年ダイエットで取り組む人が多い、糖質制限も免疫システムを弱めます。米国シモンズ大学のチームが、13万人の食生活と健康状態を20年にわたって調査したところ、総カロリーの60%を糖質から摂っている人に比べ35%の人は、総死亡率が1.3倍以上高いということが証明されています。

この結果は理屈から考えても納得がいきます。食事から糖質が満足に摂取できないと、脳の活動に必要なブドウ糖が足りなくなるため、からだは脂肪やタンパク質を分解して糖をつくろうとする。そうするとその過程で有害なアンモニアが発生したり、血管壁に傷ができたときの修復が遅れたりといった、からだに不都合なことが起こるのです。太古の昔から人間の主要な栄養源は糖質だったということを忘れてはいけません。