郊外に住む人々は東京に通勤・通学している

郊外の出生率は実は地方とさほど変わらず、決して低いわけではありません。そして、その郊外に住む人々は東京に通勤・通学しているわけですから、政府が言うほど東京の実質的な都市圏人口はさほど減らないでしょう。私は「東京の一極集中を改善せよ」という議論は誤っていると思います。

いろいろな人が集まり組み合わされる東京という場所のイノベーション力の大きさは、あなどれません。これから遠隔化が進んでも、東京の役割は続くと思います。

ただし、毎日東京のオフィスへ出社する必要はありません。私の知り合いには、ふだん軽井沢や山梨県の富士の裾野などにある広い自宅で仕事を行い、1~2週間に1度東京に出てきて小さなマンションに滞在するという生活スタイルの人がいます。実は、このような暮らし方・働き方を進めることも地方創生の1つの形だと思うのです。

日本では今後、都市の在り方も変わっていくでしょう。現在は企業も人も都心部に集中していますが、テレワークを機にどこでも働けるように整備が進めば、都市部を拠点にしてネットで全国どこでもつながれる社会が実現するのではないでしょうか。

働き方に関して、「ワーケーション」という言葉があります。ワーク(働く)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、リゾート地などで休暇を兼ねてリモートワークを行うことを意味しています。まだ導入企業は多くありませんが、今後テレワーク体制が整っていけば浸透すると考えます。新型コロナ騒動でホテルや旅館などの宿泊業界は厳しい状況が続いていますが、在宅勤務やテレワークの需要拡大を受けて、ワーケーションの宿泊プランを展開する動きも出ています。

19年の改正労働基準法施行で、高度プロフェッショナル制度が導入されました。高度な専門知識と一定水準以上の年収がある労働者について、労働時間や休日などの概念を外す制度です。この制度の導入の際に非常に多くの反対意見が寄せられたため、厳しい制約がついてしまいました。日本はなかなか成果主義には移行しづらいのです。しかし、今は多くの企業が在宅勤務の体制をとっていますし、今後ワーケーションのような多様な働き方を実現するために、労働を時間ではなく成果で管理するようなシステムに変えなくてはならない局面に来ています。アフターコロナに勝ち残れるのは、そのような変化ができる企業だと思います。

私は、アフターコロナの経済は悪くはないと予測しています。ただ、V字回復はありません。今後、U字型かL字型か、どのように回復していくかは今の備えにかかっています。アジア間の地域協力や、スーパーシティ構想をうまく推し進めていけば、日本はいろいろなフロンティアに躍り出るチャンスがあるということです。

アフターコロナは「どうなるか」ではなく「どうするか」なのです。

(構成=万亀すぱえ 撮影=大沢尚芳)
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