一部のパチンコ店が営業を続けていた

なぜ日本の死亡率が高く出てしまったのか。諸外国が自粛「命令」を出して厳しく取り締まりを行っていた一方で、日本は法律上の理由であくまで自粛「要請」しかしておらず、コントロール力が弱かったのです。緊急事態宣言下にもかかわらず一部のパチンコ店が営業を続けていたといった話も記憶に新しいですね。

日本の死亡率はそれほど低くない/人口10万人当たりの感染者数は少ないが…

国民の自主性に任せられた緩い自粛期間だったにもかかわらず、死者数をむしろここまで抑え込めたのは、もともとマスクや手洗いの習慣があった、握手やハグが少ない、大声でしゃべる文化ではないなど、衛生管理の高さや文化的な要因も影響しているのかもしれません。

日本以外の多くの国では、罰則を伴った不要不急の外出禁止命令が出されていました。例えば、イギリスでは公の場に3人以上で集まることなどを禁止し、違反すれば警察から人と距離をとるように命令されたり、最低30ポンド(約4000円)の罰金が科せられたりする措置がとられていました。また、フランスでは、生活必需品の買い出しなどの一部の例外を除き、違反すれば135ユーロ(約1万6000円)の罰金が科されるほか、繰り返せば禁錮刑も適用されるという厳しい締め付けが行われていました。

加えて、多くの国では戦争も起こりうることと想定して法律が作られているので、今回のコロナ禍でも戦争のときの体制を取っていました。

アメリカは朝鮮戦争中の1950年に成立した国防生産法を引っ張り出して、ゼネラルモーターズに対して人工呼吸器を生産するように命令を出しました。国防生産法とは、戦争継続のために必要な兵器・物資の増産や調達先の拡大、それにかかわる企業の賃金、そして広く一般消費財への物価統制まで、幅広い権限を大統領に認める法律です。アメリカは戦争や自然災害が起こるたびに、この法律を使って危機を乗り越えてきました。

また、フランスのマクロン大統領は、20年3月16日という早い段階に、「これはウイルスとの戦争である」と明言して外出禁止を訴えました。世論調査によると、外出禁止や商店閉鎖などのフランス政府の感染対策に対する支持率は95%と高く、ほとんどのフランス国民が、コロナ禍は戦時中と同じくらいの非常事態だと認識していました。

日本では新型インフルエンザ等対策特別措置法に「緊急事態宣言」を盛り込むことに関して、あるアンケート調査によると、当初国民の3分の2は「首相にそれほどの強い権限を持たせるのは良くない」として反対したのです。

20年3月7日付の朝日新聞朝刊の社説でも「新型コロナウイルスを対象に加える新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が成立すれば、人権の制限を伴う措置が可能となる緊急事態宣言を首相ができるようになる。しかし、合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相に、その判断を委ねるのは危ういと思わざるをえない」と否定的な意見が述べられました。