大統領は連邦下院のコントロールを失うと予算面で厳しい

米国大統領は自らの政権意思を示す予算案を直接議会に提出することはできない。大統領が公式にできることは行政府としての意向を示す予算教書を送付することだけだ。同予算教書を参考とするものの、連邦議員は予算策定に関する全面的な権限を有している。

特に近年では選挙区割りの見直しによって、下院議員の党派色が極めて強くなっているため、拒否権を持つ大統領と主導力を持つ連邦議会が非妥協的な衝突を繰り返すことが常態化している。そのため、大統領は連邦下院のコントロールを失うと、対抗政党に予算面で様々な妥協を強いられる状態になりがちである。

現在の連邦議会議員構成は、2018年中間選挙を受けて、上院は共和党多数、下院は民主党多数となっている。上院の構成は共和党53対民主党系47であり、共和党は自党から3名までの造反が出て50対50の議決になっても、最終的には副大統領による裁定投票で可決させることができた。そのため、トランプ政権は最高裁判事などの重要ポストに保守派を充てる人事を断行してきている。

逆に下院構成は民主党側が435議席中233議席を占有している。したがって、トランプ大統領と上院共和党は下院民主党に予算面で妥協させられており、連邦政府の予算や税制を大幅に見直すことは極めて困難な状況となっている。そして、トランプ大統領が望む更なる減税案も民主党が望む国民皆保険も進展する見通しが立っていない。

共和党の上院トップ落選&過半数割れもありうる

2020年大統領選挙と同時に実施される連邦議会議員選挙では、上院の3分の1、下院の全議席がシャッフルされることになる。

2020年の上院議員選挙は「共和党が大勝した年の改選年」となっている。したがって、残存している民主党議席(補選で勝利したアラバマ州は除く)は極めて強固であり、共和党は現在の53議席から議席数を減らすことはあっても増やすことはない。

7月現在、共和党敗色が濃厚となっている州は、アリゾナ、コロラド、メイン、ノースカロライナと4州も存在している。この4州は民主党が元々一定の勢力を有する地域でもあり、共和党候補者は極めて厳しい戦いを強いられている。

また、従来までは共和党の鉄板として考えられてきた、アイオワ、ジョージア(2議席)、モンタナなども、共和党議員のスキャンダルや民主党州知事の上院選転出などを背景に世論調査上の共和党優勢が急速に危うくなっている。上院トップであるミッチー・マッコーネル院内総務の地元ケンタッキー州ですら民主党側が激しい追い上げを見せており、共和党からすれば上院トップ落選・過半数割れという最悪の事態もあり得る状況となっている。