オススメは「個人事業主になること」

ところで、副業を始める際に、ぜひ知っておいていただきたい考え方があります。キャッシュフロー・クワドラントといいます。これは、『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)のベストセラーで名高いロバート・キヨサキ氏が提唱した新しい概念です。キヨサキ氏によると、「世の中のすべての職業は、究極的には4つに分けられる」といいます。

それが、

・従業員、サラリーマン=Employee(Eクワドラント)
・個人事業主、自営業者=Self Employed(Sクワドラント)
・ビジネスオーナー=Business Owner(Bクワドラント)
・投資家=Investor(Iクワドラント)

この4つです。

実は、キャッシュフロー・クワドラントは「何をお金に換えているのか?」ということを表しています。サラリーマンと個人事業主は、自分の労働をお金に換える職業であり、ビジネスオーナーと投資家は、お金を投じることで、お金を増やそうとする職業、ということになります。

サラリーマンとは通常、会社に所属し、会社の名前と商材を使ってビジネスを行い、売上の一部を分け前(給料)としてもらっています。対する個人事業主とは、自分の名前でビジネスを行います。裸一貫で始め、諸経費や税金以外は全部自分のものにすることだってできます。 副業を始める際、私のオススメは、この個人事業主になることです。

サラリーマンと個人事業主は、労働をお金に換える際に、必ず消費するものがあります。“自分の時間”です。自分の時間を使うということは、「時間が収入のアッパーになる」ことを意味します。ですから、クワドラントの知識がないまま副業を始め、収入を増やそうとすれば、必然的に働き過ぎてしまうことになります。実際、副業調査を行うと、多くの人が「睡眠時間が少なくなった」「体調を崩した」などと回答しています。

副業を成功させるには、“顧客の再定義”が必要

前回もお話しした通り、サラリーマンが副業で稼ごうと思ったら、高単価を目指すことがポイントです。高単価が取れる仕事としては、技術をウリにするか、オリジナリティのあるものなどが基本になります。社労士のFさんの事例を挙げてみましょう。

もともと、ある会社の総務部で働いていたFさんは、仕事の役に立つと考え、自主的に社労士の資格を取りました。するとある時、自己啓発セミナーで知り合った税理士から「顧客で社労士を探している人がいるけど、どう?」と声をかけられます。

こうしてFさんは、副業として社労士を始めますが、せっかくなので、税理士とビジネスパートナー契約を結びました。税理士から顧客を紹介してもらい、契約が成立した時点で税理士に紹介料を支払う、というものです。やがて、副業収入がサラリーマンの収入を超え、Fさんは独立しました。

もう1例は、WebライターをしているTさんです。Tさんは、もともと靴屋の販売員をしていましたが、もっと販売力をつけようと、人生初の営業系セミナーに参加します。すると、講座の中でメキメキ頭角を現し、セミナー講師を手伝うまでになりました。

Tさんは、講座の資料づくりから始まり、ついにはセミナー講師のメルマガも書き始めます。実は、通信制の大学に通って3年間以上も論文を書いていた筆力を、師匠によって認められたのです。Tさんは、昼間は靴の販売員をこなしながら、夜はメルマガを書き続けました。やがて師匠から正式に仕事の発注を受けたTさんは、副業を本業に変えたのです。

副業を検討する際のポイントは、「自分の中の何がビジネスになるのか?」ということと、「誰が自分の顧客なのか?」「その人はどこにいるのか?」ということです。

先ほどお話ししたように、サラリーマンとは会社の業務を請け負う代わりに、売上の一部を分け前としてもらっている職業です。独立したFさんやTさんは、仕事の請負先を会社から自営業者に変えました。このようにして、自分の技術はそのままに、“顧客を再定義する”ことが、個人事業を始める際のキモなのです。