ドラマとバラエティで異なる「消される基準」「許される基準」
テレビ制作の現場では、「不祥事を起こした芸能人」を編集で「消す」作業に悩まされた人は少なくない。私自身であってもここには書けないが、そうした経験をしたことはある。
収録済みの映像素材から不祥事を起こした特定の人物を消す編集作業は、実は、バラエティ番組の方がドラマより簡単だ。そしてこの違いは、バラエティとドラマの「消される基準」と「許される基準」の違いを生む理由にもなっていると思う。
バラエティ番組は、収録は数台のカメラを回しながら行われる事が多い。通常は5台くらいのカメラを同時に回して(パラ回しという)いるので、あとで「消したい人物が写っていないカメラの映像」だけを選択して編集する事で、その人物がいた痕跡すらものの見事に消し去ることができる。
収録は放送時間の倍以上かけているので、その人物が話していないパートだけを使ってもなんとなく番組が成立してしまうことも多い(MCだったりするとそう簡単にはいかない場合ももちろんあるが)。
ドラマで「消し去る」ことは困難を極める
ドラマではなかなかそうはいかない。まず、そんなに多数のカメラをパラ回ししているケースは少ない。原則は1台のカメラで、撮影直後にOKかどうかを確認しながら収録していく「映画スタイル」に近いので、何かあったときに差し替えられる映像は少ない。
しかも、台本に基づいて必要なシーンだけを撮影するため、ある人物が登場するシーンやセリフをカットすると、そもそも話の辻褄が合わなくなる。バラエティに比べて「取り返しがつかない」のだ。つまり、ドラマでは「消しにくいから消さずに放送する」というケースがバラエティより多くならざるを得ない。
例えば、今年4月18日から3週連続で週末に再放送されたTBS「JIN-仁-」の特別編では、俳優の小出恵介さんの姿が久々に地上波に流れ話題となった。
小出さんは17歳の女子高校生と飲酒および不適切な関係を持ったことが報道され、芸能活動を休止したが、不起訴になっており刑事責任は問われてはいない。近々ニューヨークの舞台で芸能活動を再開する予定だという。
ドラマは「許される基準」が厳しい
とはいえ、小出さんは多分テレビ業界から全面的に許されたわけではないと思うのだ。今回「JIN-仁-」から「消されなかった」のはドラマだからだ。「小出さんが出ているからと言って再放送を見合わせるほどではない」、「ストーリー展開に無理が生じてまで出演シーンを全カットするほどでもない」という程度に許されただけなのだと思う。
もしこれがバラエティ番組の再放送だったら、多分カットされ、消されていたのではないか。それでも十分番組として成り立つからだ。