ちょうど中国が経済的に豊かになってきた時代であり、両親から甘やかされて育ってきた人が比較的多い、といわれている。かつて中国では「小皇帝」という言葉が流行したが、「自分がいちばん」な「小さな皇帝」同士が結婚しても、衝突してばかりでなかなかうまくいかない、ということも多少は関係があるのかもしれない(もちろん、一人っ子がダメというわけではない)。ここ数年は、身体は大きくても精神的には子どもの「巨嬰症(大きな赤ちゃん病)」という言葉も生まれ、社会問題化している。

中国政府の隠れた狙いとは

筆者と同世代の40代以上の中国人たちにインタビューしてみると、離婚が増えているのにはそうした社会背景がある、と口をそろえるのだが、具体的な離婚の理由は当人同士にしか分からず、千差万別だ。

しかし、中国人が「もっと問題だ」というのは「離婚どころか結婚もしないこと」だという。離婚率よりもむしろ、そちらのほうが重大で、政府が今回の法律を決定した背景にも「とにかく結婚してほしい」「結婚して子どもをもうけて(中国の少子化を食い止めて)ほしい」という隠れた狙いがあるのではないか、と指摘する。

中国の政府系シンクタンクによると、中国の人口は2029年をピークとして2030年からマイナスに転じると発表しており、中国の人口減少は経済成長に大きな衝撃を与えるといわれている。

中国人の婚姻率を調べてみると、2018年は7.2%で、2013年(同9.9%)以降ずっと下がり続けていた(ちなみに日本の2018年の婚姻率は4.7%で、中国よりもっと深刻)。結婚しない若者が増えたことは以前から指摘されており、その理由として中国メディアなどでは、女性の高学歴化、高所得化、男女ともに草食化したこと、などを挙げている。

結婚以外の人生の選択肢が増えた

社会主義国の中国では以前から「女性だから○○してはいけない」といった考え方はあまりなく、たとえ家庭に経済的な事情があっても、優秀な女性は大学に進学する人が多かったし、男女共働きは以前から普通のことだった。だが、昔と違って、現在は職業の幅が広がり、以前よりも経済的に自立する女性が増えたことで、価値観が多様化し、(女性だけではないが)結婚以外にさまざまな人生の選択肢がある、と考えるようになったのではないか、と感じる。