黒川氏は賭けマージャンで逮捕されなかった

最近では、安倍晋三政権に近いとされた東京高検の黒川弘務前検事長が朝日新聞社員や産経新聞記者と「賭けマージャン」していたことが発覚。その際にも「上級国民」批判が起きた。黒川氏は今年5月に辞任したが、刑法の「賭博」に抵触する行為をしたにもかかわらず、その処分が国家公務員法に基づく「懲戒」より軽い「訓告」だったことに批判が集まったのだ。

安倍政権が今年1月、特例的に黒川氏の定年を延長して「次期検事総長」への階段まで用意していた裏には「捜査機関から守ってくれた政権の守護神」(国民民主党の小沢一郎衆院議員)への配慮があったとの解説も目立つ。だが、過去には「賭けマージャン」をした自衛隊員が停職処分となった例もあり、黒川氏らが行っていた「点ピン=1000点100円」と呼ばれるレートで、同じく「賭けマージャン」をしていた岐阜市のマージャン店経営者や客らが書類送検されており、「この違いはどこ?」との混乱を招いている。

元大阪府知事の橋下徹氏は5月27日のTBS系「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」で、「身内を救うために法律の解釈を変えるんじゃなくて、まず国民への説明が先でしょ」と痛烈に批判したうえで、「こういうことが容認されるならば、みんなで検察庁の前で賭博しましょうよ。大博打大会をやったらいいんですよ」と怒りを爆発させている。ちなみに、黒川氏の退職金は約5900万円に上ったというが、共同通信が5月29~31日実施した世論調査では、黒川氏の「処分が甘い」との回答は8割近くに達した。

記者も検察とのなれ合い以前に罪を犯している

「上級国民」という観点から黒川氏のケースを見ると、その甘さもあわせて「賭けマージャン」の相手側である新聞社社員にも当てはまるのではないか。朝日新聞は5月29日、経営企画室に勤務していた男性社員を停職1カ月の懲戒処分とし、産経新聞も6月16日に東京本社社会部次長と記者の2人を出勤停止(停職)4週間とする懲戒処分を発表した。産経新聞の調査によれば、この次長らは3年前ごろから4人のメンバーが固定されて「月2、3回の頻度で集まっていた」というが、「これって、常習的とはいえないの?」と思う方々はいるだろう。

さらに「情報を入手したい記者にとって取材対象者とのマージャンは、取材の機会を創出できる非常に重要な場だった」との趣旨を述べているが、検察とのなれ合いの前に「賭けマージャン」という法に抵触しているのではないか。「取材」だからといって許容されるものではないだろう。黒川氏は退職金を約800万円減額され、辞職。一方は停職処分だけという違いは何なのか。ちょっぴり黒川氏には同情してしまう。

メディアには、財務省など省庁幹部や警察・検察、国会議員らとのマージャンが頻繁に行われてきた「なれ合い」が当然との雰囲気が今もあるが、日頃から厳しく「森羅万象を斬る」ことを仕事にしているのであれば、自分たちを「上級国民」に置くことなく、より厳格な対応が求められるだろう。