16の観察研究をまとめたメタアナリシスによれば、1日当たりの野菜の摂取量が1単位(ここでは小皿1杯分を指す)増えると、全死亡率が5%低下することが明らかになりました。なお、野菜と果物は、摂取量が多くなるにしたがって、死亡率も減っていくのですが、1日当たりの摂取量が5単位(約385~400グラム)を超えると、死亡率はそれ以上低下しないこともわかりました。

果物や野菜の摂取量と死亡率の関係

つまり、健康上のメリットが目的なら、野菜と果物の摂取量の目安は、1日5単位で十分といえます。また、脳卒中や心筋梗塞などの病気によって死亡する確率も、1日当たりの野菜や果物の摂取量が1単位増えるごとに、4%下がることもわかっています。

では、がんに対する効果はどうでしょうか。「1日に野菜や果物を5皿以上食べよう」というがんの予防運動「ファイブ・ア・デイ運動」がきっかけとなって米国で始まり、日本でも広まっているのを、ご存じの人がいるかもしれません。しかし、野菜と果物を多く摂取すれば、食道がんのリスクが下がる可能性は示されているものの、残念ながら、その他のがんでは、予防効果があるというエビデンスは、確立されていないのが現状です。

野菜ジュースやサプリメントはいいか

さて、ここでいう“野菜”とは、スーパーや八百屋で売っている、加工されていない野菜を指します。もちろん、サラダなどで生の野菜を食べなければいけないわけではなく、煮物や野菜スープに入っているような調理した野菜、冷凍野菜でも、健康効果は変わらないと考えていいでしょう。しかし、市販の野菜ジュースや野菜ピューレのように、“加工された野菜”は別。野菜の加工食品については、健康効果のエビデンスがなく、加工のプロセスで、有効性を失ってしまっている可能性もあります。

例えば、野菜ジュースは、血糖値の上昇を抑制する効果がある野菜の不溶性食物繊維を取り除いて作られています。フルーツジュースのように、加工した結果、健康にとってむしろマイナスの効果を示すケースもあります(果物編を参照)。健康上のメリットを追求するなら、生の野菜を摂ったほうがいいでしょう。

また、サプリメントで、野菜の成分だけを手軽に摂ろうとするのも考えもの。というのも、健康効果のエビデンスが示されているのは、あくまでも生の野菜であって、野菜の成分ではないからです。例えば、トマトに多く含まれる「リコピン」は、血中濃度が高い場合に摂取するとがんや心筋梗塞のリスクが下がるという研究報告があるのですが、リコピンをサプリメントで摂ることで、実際にがんや心筋梗塞を防いだり、死亡率を下げたりしたというエビデンスはありません。