――ダンナさんはご存じなんですか?

【小幡】夫と話し合って、とりあえず目先の利益を追うのはもうやめようって。100年に一度の不況に当たっちゃったわけだから、塩漬けのまま子供に贈与して、「あんたらが好きなときに売りなさい。もしダメなら孫の代で売りなさい」ということにしています。配当は年4万~5万円ぐらいしかないし、二進も三進もいかないから節約一筋。今、3階建ての家を買って住んでいるんですが、生涯に家を3軒建てようと思って、ちょっと事業拡大したところもあるんですけど。

【滝上】リーマン以降、マンションの掘り出しモノ物件はひそかに出回ってますね。

【大石】マンションは今や投げ売り状態。元を取ろうなんてとんでもない。都心では、昨夏前なら5000万~6000万円、3LDKクラスの物件が今は2割安。埼玉、千葉あたりだと、元の値段はもう少し下がるけど3割安、ひどいところでは半値という物件さえ聞いてますよ。

一同 (うなずく)

【大石】例えば、一部上場の不動産業者が倒産して転売されたマンションなどは80平方メートル4000万円台のマンションが2000万円台まで暴落。一昨年初めに、購入していた客からは「カネ返せ!」と怒りの声も出る始末です。でも、最初に販売に携わった業者はもう倒産したり、ほかの業者に代替わりしてしまい、追及は実質的に不可能。でも、客からすれば怒りが収まるわけがない。

【小幡】でもそれ、ひどい話ですね。

【大石】このため、こうした先に高く購入した住民と後から安く購入した住民との間に、どうにも解決しにくい感情のしこりが残ってしまい、自治会も機能しない事態も発生しつつあるようです。

【滝上】オリンピック後の北京では、マンションを一戸購入すればもう一戸ただであげる突飛な業者も出ていると聞くけど、日本でも当初価格より1000万円も値引きとなると、新築購入すれば中古マンションをつける、などという業者がそろそろ現れそうですよ。

【大石】先ほどの武井さんのお話じゃないですけど、家賃保証制度などでマンションを投資用に購入した客に、業者が契約見直しという荒業を迫るケースもありますね。立地条件が悪くなくても空き部屋が増え、賃料がジリジリ下がっているから、違約金を払ってでも解約したほうが得と判断したんでしょう。空き室が続けばすべて業者持ち。半年くらいならいいけど、2年、3年と続くとさすがにねえ。なかには、最初から2年で契約破棄するつもりで、あらかじめ物件の価格に上乗せしておくとんでもない奴もいる。

【武井】ワンルームマンションなんて、今は購入時の半額でも売れませんねえ。新築ですら投げ売り状態なんですから。株だって今、「千載一遇のチャンス」とか言われるけど、とてもそうは思えない。

「落ちてくるナイフを素手でつかむ」という言葉があるけど、まさにそういう心境だよね。

(田村建男=取材 西川修一=構成)