中国からの独立はもちろん、反政府行為も「犯罪」
中国が進める「香港国家安全維持法案」は欧米を中心に「一国二制度」に抵触するとの懸念の声が強いが、それでも7月中には成立する見通しだ。全人代の常務委での討論を経て、次のような「禁止行為」が盛り込まれた。
成立すると、次の4つの行為が国家安全を脅かす犯罪行為として禁じられる。
・中国からの離脱を目指す「分離独立行為」
・中央政府の権力もしくは権威の弱体化を意図する「反政府行為」
・他人への暴力や脅迫を仕掛ける「テロ行為」
・外国勢力との結託
うち、4つ目の項目はもともと「国外勢力による香港への干渉活動」となっていたが、これを外すことで諸外国からの懸念や批判をかわそうとする意図を感じる。ただ、新たに「外国勢力との結託が違法」と記されたことで、民主派が外国勢力の支援を受けながら活動する芽を摘み取られる可能性が高い。
また、既存の香港の法律と矛盾した際には、維持法の規定を優先して適用するとの付則も付くという。つまり中央政府に主導権があると示した格好となっている。こうした状況の中、中国政府は目下、香港の議会に当たる「立法会」での採決を経ない形で同法案の成立を目指そうとしている。
ストやボイコット運動に人が集まらない
一定数の市民は依然として、同法案の廃案に向けた抗議活動を進めようとしている。
さる6月20日、香港の労働組合と学生団体が共同で、同法導入に抗議するゼネラルストライキ実施の是非を問う投票を行った。投票を呼びかけた側は6万人が投票すると期待したものの、実際に行動を起こしたのは1万人に満たなかった。得票分の大多数はゼネスト支持を訴えているものの、反対活動の勢いは確実にそがれている。
また、中学生らが授業をボイコットしようと呼びかける投票も同時に行われていたが、賛成者数は主催者が目標としていた水準に達せず、こちらもボイコットの実施を見送るとの声明を出している。
新型コロナウイルス感染拡大により、こうしたムーブメントは失速を余儀なくされたと見ることもできようか。多くの人々が「現状を変えることができない無力感」に打ちひしがれていることだろう。もし同法が成立し、香港に見かけ上の安定が訪れたとしても、それは「ある種の強力な圧力によるもの」と判断すべきかもしれない。ひいては、表に出ないところで活動が継続され、ゲリラ的なテロ行為につながる危険性も排除できない。