4割近くが「香港から出たい」と回答

香港紙「明報」は先日、「国家安全法が成立したら移民したいか?」とのアンケートを実施。うち、4割近い37.2%の人々(市民数から推算すると最大280万人)が香港から出たい、と答えた。

「移民したい」と訴える香港市民はおおむね「中国の法の支配が香港に及ぶのなら、早く逃げたい」と考えている。では彼らは本当に「海外脱出」するかどうかについて考えてみたい。

香港では、1984年の中英共同宣言が決まって以降、「自分の街が中国の支配下に落ちるのは許しがたい」と考え、海外に生活の拠点を求め多くの人々が移民した。当時の状況を思い出すと、富裕層が逃げるのは理解できるとして、そうでもない「ごく普通の市民」が前途を悲観して自ら移民の道を選んだ。

移民先は英国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった国々なのだが、そこで暮らしを始めたものの、仕事がない、文化習慣が合わない、さらには気候が違いすぎるなどさまざまな理由で定住できなかった人々も多い。外国籍だけ取って香港に戻った人々もいる。

政治的な危機が目前に迫っているとは言え、周りに「移民に失敗して香港に戻ってきた人々」が多い中、どれだけの人々が移民を実行に移すかは未知数だ。

英国での居住や就労が認められる可能性も

中国が国家安全法の香港での適用を進めている動きに対し、英国は「一国二制度への大いなる挑戦」とみなした。そこでジョンソン首相は、香港市民に英国市民権取得への道を開くため、以下のような提案を明らかにした。

要約すると次のようなものだ。

<英国による香港市民への支援案>
・英国海外市民(BNO)パスポートを保有する香港人に認めているビザなしの英国滞在期間を、現行の6カ月から12カ月に延長する。
・BNO保有者には今後、就労を含め、これまで以上の権利が与えられる。
・BNO保有者には英市民権を獲得する道が開かれる可能性がある。

※「英首相、香港人のため移民規則変更を検討 国家安全法に反発」(6月3日、BBC)より

香港が英国から中国に返還されたのは1997年7月だが、それから20年以上たつのにいまだ英国政府発行のパスポートを保持する市民がいることに驚きを感じる人もいるかもしれない。BNOは、香港が英領だった当時に香港市民に発行されたもので、英国本土にいる英国民と同等に扱われることは約束されておらず、英国内での居住や就労は認められていない。

また、返還前日の1997年6月30日までの香港出生者しか取得する資格はなく、両親がBNOを持っていてもその子供がBNOを取得する権利はない。