映画監督の黒澤明さんは『悪魔のように細心に!天使のように大胆に!』(東宝株式会社)のなかで、「創造とは記憶ですね」と書いています。ピカソも「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」と言ったという説があります。つまりどんな大天才でも無から何かを創り出すということは不可能に近く、心のなかの豊かなストックが創作の源泉になるのです。
子どもが自ら本に出会う機会をつくる
本を読むにあたっては、真剣に読むことも大事だと思います。そこに何が書かれているか、それをどういう方法で表現しているか、一生懸命読み込むのです。
私は、本のなかでうまい表現、印象に残る表現、心が揺さぶられる表現に出会ったら、頭のなかにしっかりとメモするような気持ちで、ページの端を折ったり、ラインマーカーで線を引いたりしています。「好きな言葉が出てきたら、線を引いてごらん」とお子さんにすすめるのもよいかもしれません。
最後に、一つ気をつけたいのは、本というものは基本的に自分から出会うものであるということです。
私は小学5年生くらいのときに、父親から「これを読んでみろ」と言われて、山本有三の『路傍の石』を渡されたことがあります。私はどうしてもおもしろいとは思えずなかなか読み進めることができませんでした。
それなのに、次女が15歳になったとき、こんな本を読んでみたらどうかと、日本文学とノンフィクションのリストをずらりと書き出して渡しました。娘は「いや……ちょっといいかな」と言って結局、1冊も読もうとしませんでした。いつも「本とは自分で出会うもの」と言っていながらまったく逆のことをやってしまい反省しました。
読書の大きな楽しみの一つは、図書館や本屋を探索して、思いもかけずおもしろそうな本に出会うことです。親ができる最良の手助けは、子どもが自ら本に出会う機会をつくることです。