事前予約や検温…感染対策を万全にしてテーマパークも再開へ

「ユニバーサル・スタジオ・フロリダ」では、5月14日から先行して商業エリア「シティ・ウォーク」がオープンした。行列や支払いの際の距離確保のためのレイアウト変更など準備を終え、6月5日にテーマパーク含む全施設営業を再開する。入場者数を制限、2歳以下の子どもを除く来場者全員にマスク着用を義務づけ、営業時間の短縮やスマートフォンを利用した行列待ちなど、細かく定めたルールを徹底する。

ウォルト・ディズニーは上海に続き、全米では最初となる「フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」を7月11日から営業再開する計画を提出した。今後は新たなにすべて事前予約が必要となり、検温やキャッシュレス決済などの対策が導入される。

5月20日に先行オープンした商業施設エリア「ディズニー・スプリングス・フロリダ」ではマスク、手洗い、2メートルの間隔など注意を促す注意書きと消毒液が至る所に設置され、スタッフとゲストのマスク着用率も以前のアメリカでは考えられないほど高かったようだ。

地元テーマパークの一つ、個人所有のワニ園「ゲーターランド」も5月23日に営業再開。オーナーは32ページに及ぶ再開オペレーション資料を制作し、オレンジ郡政府から許可を得た。来場者に無料のマスクを配布するのに加え、体温チェック、消毒液使用、ソーシャル・ディスタンスなどを求める。園内でルールを守らない客に「スカンク・エイプ(地元の類人猿型動物)」の着ぐるみキャラクターが体当たりして回るという動画がYouTubeで数万回再生され、マナーの周知に一役買っている。

気の早いアメリカの旅行会社は、秋の日本ツアーをすでに販売中

一方、アメリカでは一般市民のほうも驚くべきことに、連日全土で1000人を超える死者数を出す中も、バカンスの計画に動き始めている。クルーズ船ツアーを提供するカーニバルクルーズラインが8月出発のツアー予約を開始したところ、前年同期比で200%増の申し込みが殺到しているという。あるオンライン旅行会社では、9月出発のアメリカ発日本ツアーを販売中だ。13日間で2000ドルから(もちろん往復航空代込みだ)の商品を「破格値!」「キャンセル無料」とうたって受け付けている。

セントラルフロリダ大学 ローゼン・ホスピタリティ経営学部 原忠之准教授(写真提供=原忠之准教授)

「アメリカの観光事業者は、(1)可視化されたCOVID‐19対応新オペレーションを構築し、(2)顧客全員に衛生対策を行う安心感を与え、(3)キャンセル無料の条件で、(4)コアファン向けにニュースレターやSNSでそれら対策状況を定期的に通知、(5)ファン・リピーター需要を掘り起こして運営再開します。クルーズ船ツアー会社もユニバーサル・スタジオもウォルト・ディズニー・ワールドも、みなコアファン層と直接のコミュニケーションを取って、エンゲージメントを維持する顧客マーケティング戦略があるから、ちょっといいお知らせをすると熱烈に反応してくれるゲストからの需要復興が結構早い。

消費者側を見ても、自粛・自宅待機の間に止まっていた需要が、一部産業セクターの需要を押し上げます。私の所にも欧州系航空会社の運行再開のニュースを見たアメリカやヨーロッパの知人から『2~3カ月後に日本行きたいのだけど教えて』という照会がここ数日で3人から来ました」(同氏)