1000名以上のインターンほぼ全員が失職

セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部で観光ホスピタリティ・ビジネスの研究と教育に携わる原忠之准教授に、詳しい状況を聞いた。

「年間7500万人と全米最高数の来訪客が訪れる当地の人口は140万人で、ホテル客室数は9万室以上あるのですが、年間客数5800万人の「ウォルト・ディズニー・ワールド」と同1100万人の「ユニバーサル・スタジオ」など、集客力のあるテーマパークが閉鎖した影響は甚大でした。

観光関連産業の雇用者比率が高いオーランドでは、必須科目であるインターンシップを履修している当学部の学生は毎期1000名以上いますが、3月のテーマパーク閉鎖により、スーパーマーケット勤務の学生など一部を除くほぼ全員が突如、仕事がない状態になりました。失業は全員平等に訪れる訳ではなく、正社員より時給労働者、男性より女性、米国人より外国人の失業率が高く、それらに相関して最終学歴も失業率と関係ある事が見えてきます。

当地では、夫婦で観光関連に従事していたためそろって仕事を失った家族の話も新聞に出ていました。奥さんがホテルのハウスキーパー、ご主人が観光客向けウーバー運転手で、どちらも時給職だと、即失業です。  

オーランドでは民間主導の協議が重ねられていた

オーランド(行政区域はオレンジ郡)では民間企業代表者50名程度で『COVID‐19(新型コロナウイルス感染症)後経済再開検討委員会』が立ち上がり、オンラインで協議を重ねてきました。これにはホテル、レストラン、運輸業、テーマパーク、ショッピングモール、空港など観光関連産業が加盟しており、その中には、大企業から街の理髪店・ヘアサロンといったスモールビジネスのオーナーも入っています。協議の全てに地元政府がオブザーバーとして参加しています。

慎重かつ段階的に、しかし早期に再開すると言う方針のもと、2カ月程かけて作ったこのタスクフォースの提案を首長が承認し、域内全体で営業再開に至りました。そのようなプロセスが当事者である民間事業者たちに可視化されているため、被害甚大な米国においても一般の住民が比較的我慢できたという背景があります。日本のように政府や自治体の決定待ちで不満を募らせるのではなく、民間が自主的に実効性のある計画を作り、それを政府に承認させて時期が来たら実行に移す、というのがアメリカ流です」(原氏)

民間企業主導の計画に沿って、フロリダ州の観光施設も順次再開
写真提供=原忠之
民間企業主導の計画に沿って、フロリダ州の観光施設も順次再開