控えめ姿勢では観光客を他のアジア諸国に取られる可能性が…

今後、観光地や観光事業者は、変容する世界の旅行者の変化を認識して、必要とされる動きをとることが必要だ。原氏は、来たる観光ニュー・ノーマル(新常識)時代に日本と世界のスタンダードが乖離するのではないかと強く危惧している。アメリカから見える、今後の世界と日本の国際観光についての考えを聞いた。

「オーランドでも、(1)近隣住民→(2)150マイル(240キロ)圏内の自家用車利用客→(3)全米他州国内客→(4)海外からのインバウンド客、という順で観光復興を想定して再開案を作っています。しかし最近、日本の観光関係者からよく耳にする(1)地元優先→(2)次に日本人→(3)その後最後に外国人が戻るまで18カ月、というインバウンド復興時期の観測は、相当間違っていると思います。

日本人によくある『復興時期は感染状態が予想不可なのでわからない』という見方も賛成できません。観光需要がCOVID‐19前の水準に戻るのが平均18カ月後だとしても、現在の底状態からそこまで戻る際に、セグメントに分ければより早く戻る層が確実に存在します。

当地の『経済再開検討委員会』でも取りまとめ役としてリーダーシップを取る米国型のDMO(Destination Marketing Organization。日本では登録DMO=観光地域づくり法人と呼ばれる)のビジネスモデルは、「観光需要が先に戻るセグメントは旅行リスク許容性が高いミレニアル世代とZ世代」などと消費者データなどを裏付けとして取ることで失敗の可能性を最小化し、観光復興需要を自らコントロールして取りに行きます。

観光客が復興需要で戻るタイミングの平均が18カ月だとしても、日本は18カ月も取り込みを控えていたら、観光客の大多数を他のアジア諸国に取られます。キチンと戦略策定し、英語で発信する事は必須です」(同氏)

イノベーター理論をインバウンド回復時期とターゲット層に応用

イノベーター理論において新商品やサービスを進んで受け入れる「イノベーター」や「アーリー・アダプター」といった層と、インバウンド旅行者のうち日本コアファンや旅行再開積極派の消費者行動は類似し、さらには今後、旅行先として選ばれる重要な要素を日本は有するため、世界の観光需要の中でも先行需要を取りにいけると原氏は考える。

コロナ後の日本には絶好の集客チャンスがある

「COVID‐19拡大以前よりも、旅行先選択においてSafety(安全), Security(安心), Cleanliness(清潔)といった要素を重視するという現在の消費者心理データが出てきています。それならば、世界の旅行者の間で伝統的にその卓越性があるというイメージを勝手に持たれている日本にとっては、20~30年に一度のDestination Marketing(観光地マーケティング)好機だということになります。しかし、それが過剰に悲観的な日本人には見えていない。DMOやインバウンド事業関係者は、これを自分で補正しないと世界の観光復興需要取り込みに遅延する可能性があり、致命的なバイアスになります。

国内観光は日本国内での富の移転であり、主に都市部の金が地方に動くだけで日本全体の富は増えず、経済効果としては日本の国際収支がプラスにはなりません。しかし、インバウンド消費は外貨を獲得する輸出産業で、地方にも中央政府にも国富増大の恩恵が行く。昨年4兆8135億円まで来たインバウンド消費は、人口増で自然と恩恵にあずかれるアジアの可処分所得増地域だけでなく、欧米成熟市場でまだ取れていない分の伸び代と、今後可処分所得が増加する新興国も狙えます。

一時的に外国人旅行者が消えた現在の状況に『インバウンドなんかアテにするから、ほら見たことか』という類いの論調があります。それに反論する人をあまり見かけないのは残念です。日本の観光関係者には正しく頑張ってほしいと思います」(同氏)

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