叩ぎ上げ菅義偉ならではの、いぶし銀政策
大規模なバラマキ政策に比べて地味な改革ではあるが、家計において事実上の固定費用となっている携帯電話料金の引き下げが本格化した場合、その家計支出における改善効果のインパクトは大きいだろう。たたき上げの国会議員である菅官房長官ならではの人材とタイミングを見計らったいぶし銀の政策と言える。
一方、岸田政調会長は第一次補正予算で潰された面子を補うために、第二次補正予算で家賃補助を含めた巨額のバラマキ予算を取りまとめた。二次補正に含まれる形で予備費として計上された10兆円は今後国会による監視を最小限に抑えたうえで、様々な利権としてばらまかれていくことは想像に難くない。実に自民党的な補正予算だと言えるだろう。
岸田氏はポスト安倍レースに首の皮一枚残したかもしれないが、今後、新型コロナウイルス禍から日本が立ち直っていくには、単純な利権バラマキ政治家ではなく、現場の課題を熟知した知恵を持つ本物の政治家が必要だ。
安倍政権は二世・三世議員のような現場を知らない閣僚を重用する傾向がある。そして、昨年末から現在まで同政権は菅官房長官を徹底的に排斥する動きを見せている。
それでも二世・三世を優遇する安倍晋三。菅義偉は人柱に
この動きは安倍首相が岸田政調会長に政権を禅譲することで影響力を残す布石の一環として見られている。この禅譲シナリオにイレギュラーが発生する芽を事前に摘み取る一手が菅外しなのだ。
安倍首相・菅官房長官の軋轢は、菅官房長官の側近とされる官僚らの力を削ぐ動きが頻発し、同長官と安倍首相の取り巻きの官僚たちとの険悪な関係が報道で伝えられることで、官邸の外側にいる国民にも広く周知されることになった。
国民が新型コロナウイルス禍、そしてそれに伴う経済不況で苦しむ中で、危機管理の要である官房長官を機能不全状態に追い込んだ代わりに、メディアに対する人身御供としてアベノマスクに関するくだらない記者会見の応答をさせるなど、安倍政権の国民不在の権力闘争の有様は正直言って絶句せざるを得ない。安倍政権の官房長官としてはどれほど理不尽な尻ぬぐいであっても、メディアの矢面に立つ必要があるだろうから、その心中をお察しせざるを得ない。