「オンライン授業」ができない日本のウイークポイント

過去のパンデミックの歴史から、ほとんどの感染症の専門家は「第2波は必ず来る」という見解を示している。そうであれば、第2波が来ることを想定して、計画や準備を行うほうが賢明であるはずだ。

仮に今秋以降、第2波、第3波が来て、再び休校が数カ月続く状態になるのに備えて、前述の「現行の制度のまま進める案」以外に、別の問題解決方法も視野に入れておく必要があるのではないか。

例えば、学校に行かなくても、生徒や児童がカリキュラムを学べるようにする。と考えた時、すぐに思い浮かぶのが、「教育のオンライン化」だ。しかし日本の場合、ここがウイークポイントなのである。

中国やフィンランドなどでは、コロナ禍でオンラインの授業への切り替えにより通常の授業に近い形で違和感なく行われていることも報告されている。だが、現在の日本のICT状況では今秋の段階ではその実現は極めて難しいと言わざるをえない。

2018年に行われたOECD(経済協力開発機構)の「PISA」(国際学習到達度調査)におけるICT活用に関する項目では、日本は授業中のデジタル機器使用時間がOECD加盟国の中で最下位となっており、今回の新型コロナの件でその体たらく状態がほとんど改善されていないことが露呈した。

文科省も何もしていないわけではない。オンライン化授業への構想をしっかり立てている。全国の小中学生に一人一台のパソコンを配布するGIGA構想がそれで、当初の計画では2023年度末までに完了予定だったが、コロナ禍の4月7日に、「今年度中に前倒しして配布する方針」へと変更した。

このパソコン類は、公立ではまだ十分に行き渡っていないところが多いが、私立はコロナ禍でもオンライン授業にスムーズに移行しているところが多い。こうした公立と私立の学校による激しいICT格差も問題だ。

第2波で再び休校となり「どうやって勉強すればいいんだ状態」になる

別の問題もある。それは、通信環境の問題である。今回、外出自粛となったことで、テレワークによる通信の使用、オンラインや動画、スマートフォンの使用による通信への過重な負担により、Wi-Fiがつながりにくいという状況も起こった。4G回線を使用するとなると、相当なギガを使用するため、通信ネットワークの負荷が大きくなる問題も至急解決する必要があるだろう。

さらに、コロナ禍においてOECDの緊急調査から分かったのが、「日本の教育におけるICT機器の普及率」が調査対象77カ国中66位、「教員のICT教授スキル」は77カ国中最下位という情けない事実である。つまり、教員によるICT活用のための研修期間も必要なのだ。

以上のような課題により、日本の教育はICT導入に向けたプロセスを歩んでいるものの、その準備がきちんと整うまでに最低1年は要するということがわかる。

ということは、秋に新型コロナ第2波が起こった場合、今年の4月と5月と同様に、生徒・児童は「どうやって勉強すればいいんだ状態」になる可能性が非常に高くなり、家庭に多くの学習を委ねるという形とならざるを得ない。形式的にはカリキュラムを完了したことにすることはできるだろうが、それは本来の「教育」とはとても言えないだろう。