イタリア人にとって重要な「祖父母との日曜日」
「フェーズ2」で休業解除と同じかそれ以上に国民の関心を集めたのが、親族との面談の解禁である。家族の絆を大切にするイタリア人にとって、離れて暮らす祖父母や叔父叔母に2カ月以上も会えないでいる状況は、心を引き裂かれるほどつらいことであった。古いイタリア映画には必ず大家族の暮らしが描かれているが、統計によると現在もなお52%のイタリア人が、日曜日の昼食を祖父母とともにとる習慣を持っているという。コロナ禍はまさに、そんなイタリアの文化にくさびを差したのだった。
特にツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で盛り上がったのが、面談解禁をコンテ首相が発表する際に用いたコンジュンティ(congiunti=縁者)という言葉の定義だ。なぜならコンテ首相が、「縁者」の例として両親、兄弟姉妹、祖父母に続き、「アッフェッティ・スタビーリ(affetti stabili=安定した愛情)」という表現を用いたからである。この言葉にはニヤリとするイタリア人も多かった。
というのも、コンテ首相はバツイチのイケメンで、現在は大手ホテルのマネジャーをしているオリビア・パラディーノという女性と交際中である(オリビアの父はイタリアの実業家のチェザーレ・パラディーノ、母はスウェーデンの女優、エヴァ・オーリン)。ネット上では、コンテ首相にとって「アッフェッティ・スタビーリ」に会えない状況が続くのは都合が悪かったのではないか、との臆測が飛び交った。
一方でコンテ首相としばしば舌戦を繰り広げる政敵、右派ポピュリズム政党「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ党首は、今回はこの「アッフェッティ・スタビーリ」という言葉にかみつくことはなかった。サルヴィーニもまたバツイチの独身で、テレビ司会者のエリザ・イゾアルディと「アッフェッティ・スタビーリ」な関係にあったことで知られている(最近破局したとのうわさだが)。イタリア男にとっては、ここを冷やかすのは野暮天ということなのだろうか。結局、首相演説の翌日には「縁者とは6親等までを指すが、婚約者もこれに含める」という定義が付け加えられた。