「怖い人たちだと思っていたけど普通の人だ」
ツイッター上でこんなコメントを見かけた。
「北朝鮮の人って怖い人たちだとずっと思ってきたけれど、普通の人じゃん! ちょっと親しみを感じて、友だちになってみたいと思った」
「北朝鮮の第5中隊(軍人)の若者4人組がコミカルで笑える!」
「北朝鮮の人もやっぱり韓国ドラマを見ているんだ!(笑)」
「北の女性たちのファッションやお化粧がおもしろい」
「村の雰囲気とか人情とか、何だか自分が小さかったころを思い出して懐かしさを感じる」
もちろん、女性の視聴者の多くは、主役の2人の切ない恋愛や、主役のヒョンビンの軍服姿、愛する女性を守り抜く姿などに胸キュンする人が多い。だが、それだけでなく、視聴者の興味を引いているのは、ドラマの半分以上で舞台となっている謎の国、北朝鮮だ。村や家屋、人物について細部まで描かれているため、リアリティーを感じたり、引き込まれたりするという男性が多く、それが従来の韓国ドラマファン層とは違う人々を取り込んでいる一因のようだ。
脱北者が制作に関わり、リアルな日常を描いている
それもそのはず、同ドラマの脚本には脱北者の意見が多く反映されている。北朝鮮出身の脱北者で、韓国でユーチューバーとして活動しているハン・ソンイ氏は韓国メディアのインタビューに対して「ディテールの描写がうまくて、脱北者の間でも、これまでの『北朝鮮実写化』の中で最高峰だと評価されている」と話す。制作にあたっては複数の脱北者へインタビューやアンケートを行ったといい、北の実態が見事に映像に生かされている。
例えば、主人公のセリ(演じるのはソン・イェジン)が迷い込んだのは平壌から離れた小さな寒村。テレビで見る首都・平壌の無機質な街並みとは違い、そこに暮らす人々の家は質素な平屋で、家庭内に家電製品は少ない。少し裕福な「大佐」の家には電気炊飯器があるが、それは「南町」という隠語で呼ばれる韓国の製品だ。村には共同の炊事場があり、女性たちはそこで井戸端会議をしながら手洗いで洗濯をする。悩みは夫の出世や子どものことなど、他愛ないものだ。
停電に見舞われたり、韓国ドラマを熱心に見る人も
停電がしばしば起こるので、自転車をこいで発電したり、ロウソクをつけて食事をしたりしなければならない。だが、そこに悲壮感や見下した感じはなく、コミカルに描かれている。夜になれば、「宿泊検閲」と呼ばれる抜き打ちのチェックが行われる。脱北者の証言によると、「夜10時以降は外出できない決まり。誰かをこっそり泊めたりしたら処罰される」そうだが、そうした面も「北の厳しさ」という以上に「実際にそういうことがあるのか」と理解が深まるように描かれている。