結局増税にむけて歩み始める安倍晋三

一方、安倍政権の税制の方向性は、減税どころか増税を示唆する動きを見せ始めている。最も筋悪なシナリオは「コロナ増税」であろう。政府がさまざまな財政出動政策を実施したところで、後で増税されて回収されるのではないかという懸念が国民の間に急速に広がっているのだ。

懸念が拡大したきっかけは政府が新型コロナウイルス対応のため政府が設置した「基本的対処方針等諮問委員会」に、経済の専門家を4名追加したことだ。その専門家メンバーの過去の発言などが消費増税に対して積極的なコメントを行っていたことから、「事実上の増税準備」の始まりとして、東日本大震災の時のように復興増税のような形でさらなる増税が待っているのではないかという懸念がTwitterなどのSNS上で拡大してしまったのだ。

これらの懸念に対し、西村康稔経済再生担当大臣・新型コロナ対策担当大臣は火消しに追われることになり、自らのTwitterで「コロナ対策の諮問委員に任命した#小林慶一氏は財政再建至上主義者との評価がありますが、任命に際し本人と何度も話しました。最近の氏の論文では、今は財政再建にこだわらず国債発行してでも厳しい状況にある人の支援を行うべきと、財政支出の重要性を主張しています。経産省の後輩でもあります。」と釈明の弁を述べる羽目に陥った。

そして小泉進次郎が国民の息の根を止める

しかし、西村大臣がどのように取り繕ったところで、国民に一度持たれてしまった懸念は簡単に払拭ふっしょくされることはない。むしろ、株式市場などが増税の可能性を織り込むことは避けがたいだろう。世論は政府の新型コロナウイルスの一挙手一投足に注目しており、今後、アフターコロナを見据えて景気をV字回復させることを図る中、政府の同諮問委員会の人選はいささか軽率なものだったと言えるだろう(もちろん、政府の本音がコロナ増税にあるなら話は変わってくるが)。

実は、現在、安倍政権はこの他にも大型の増税のための仕込みを行っている。こちらはコロナ増税のような懸念ではない。国民が新型コロナウイルスと自粛で苦しんでいる中、実際に新たな国民負担を増加させるための調査研究の入札が実施されている。

それは小泉進次郎氏が所管する環境省が行った「令和2年度カーボンプライシング検討調査委託業務」(入札提出期限2020年4月8日)、「令和2年度カーボンプライシングが地域経済に及ぼす効果・影響に係る情報収集等委託業務」(入札提出期限20年3月19日)の2つの入札案件である。