在庫ゼロを実現する製造業の究極の理想形

<strong>野路國夫●コマツ代表取締役社長兼CEO</strong><br>1946年、福井県出身。69年大阪大学基礎工学部卒業後、コマツ入社。2001年常務取締役生産本部長兼e-KOMATSU推進本部長、03年取締役専務執行役員建機マーケティング本部長などを経て、07年2月より現職。
野路國夫●コマツ代表取締役社長兼CEO
1946年、福井県出身。69年大阪大学基礎工学部卒業後、コマツ入社。2001年常務取締役生産本部長兼e-KOMATSU推進本部長、03年取締役専務執行役員建機マーケティング本部長などを経て、07年2月より現職。

まさに「IT(情報技術)とMT(製造技術)が融合」する接点で、コマツが培ってきた現場力が発揮されたわけだが、それだけに野路の自信には揺るぎないものがある。コマツの底力を感じさせる発言に、「グローバル部品表ではトヨタを上回ったといわれています」と畳みかけたが、野路は「いや、他社のことはわかりません」とやんわりかわした。そこで、もう一方の柱であるコムトラックスに水を向けると、1つの経営戦略として経緯を話し始めた。

「あれは坂根(正弘会長)さんが経営企画室長で、私が情報システム本部長の頃、坂根さんから『若いやつのいいアイデアがある。これはITだからおまえが面倒見ろ』と言われたのが始まりです。初めはあまりうまくいかなかったが、坂根さんから『これは絶対ものになる。金をかけていいから、採算を度外視してもやれ』と厳命されて、とにかくスタンダード(標準装備)にすることを前提に開発を急ぎました。今思うと、スタンダードにすると開発の動きが早くなる。それを後押しするのがやはりトップの決断なんです」

野路が語るように、01年度のどん底から這い上がるとき、社長の坂根が発した大号令が今になって大きな実を結んだ。しかし、「まだまだレベルが低い」と言う野路に、今後のコムトラックスの進化形について聞くと、こんな答えを返した。

「僕の考える最終形は、建設機械1台あればそこにうちのお客さんの生産管理情報が全部入り込んでしまう姿にある。それが実現すれば、これはもう完全に生産計画から、管理、実績、作業指示まで、すべてそこでオペレーションが済んでしまう時代がくるかもしれない」