学生数は早稲田が多いのに…

また、早稲田はIT企業への就職人数でも、慶應を上回っているが、「進取の気性を重んじる、早稲田スピリットが成せる業かもしれませんね」(同)。それに比べて、慶應生は、待遇が良くて、業績も安定しているブランド企業を、就職先として好む傾向にあるようだ。堅実ではあるが、「寄らば大樹」といった保守性が強いのかもしれない。

国家公務員は早稲田、司法試験・公認会計士は慶應

企業以外の就職先については、早稲田は慶應と比べて公務員に強いという特徴もある。インフラ系の企業と同様に、「早稲田生は、地方志向が強いため、公務員志望者も多いのでしょう」(同)。

一方で、司法試験や公認会計士試験では、慶應が早稲田を引き離している。慶應は、もともと公認会計士試験に強かったのだが、最近では司法試験合格者数でも早稲田を上回るようになった。

安田さんは、「ロースクールで、明暗が分かれました。慶應は司法試験の合格者を増やすことに成功しましたが、早稲田は法学部卒業生以外に門戸を開くなどしたことが理由で、合格実績が低迷したからでしょう」と話す。

早稲田は慶應よりも学生数が1.5倍近くも多い。学生の質、企業の評価が同じなら、早稲田はトップクラスの人気企業への就職人数でも、慶應の1.5倍でなければならない。ところが、慶應に追いつくどころか、差をつけられている業種・企業も、少なくないのが現状だ。早稲田は、就職対策で、まだまだ課題があるといえるのではないだろうか。

安田賢治
安田賢治(やすだ・けんじ)
大学通信 常務取締役
1983年に大学通信入社。以来、大学をはじめとするさまざまな教育関連の情報を、書籍・情報誌を通じて発信。
 

オバタカズユキ
オバタカズユキ
コラムニスト
著書は『早稲田と慶應の研究』(小学館新書)などのほか、『大学図鑑!』(ダイヤモンド社)を監修。
(撮影=早坂卓也、石橋素幸)
【関連記事】
慶應法学部が私大偏差値ランキング首位に躍進した理由
データで見る教育格差「AO入試組と一般入試組の年収格差66万円」
ラーメン二郎店主も参加「三田会」の正体
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ
30代で身を置くと"ムダ"に終わる会社の共通点