スピーチを上達させるにはスピーチを聴くことが大切なように、文章を上達させるには文章を読むことです。本や新聞を読み、知らない言葉があれば意味を調べ、できればメモをする習慣をつけたいものです。
類語辞典は便利ですが、安易に言葉だけを言い換えると不自然になる場合があります。言葉はあくまでも背景や文脈の中で成立しているものですから、前後関係まで含めて正しい使い方を知っておかなければなりません。
語学の勉強にも通じることですが、ボキャブラリーを増やすなら、まず自分の専門分野から掘り下げていくことです。精密機械関係の仕事をしているなら、関連のビジネス文書はもちろん、仕様書や説明書、専門書にあたって、その分野の専門用語や術語、業界語を使いこなすことから始めましょう。それは自分の大きな強みになります。
また、日常とは離れた言語空間に身を置くことも、とても勉強になります。例えば茶道の世界では「拝見させていただきます」「お相伴いたします」「結構なお点前です」など普段使わないボキャブラリーが行き交います。
言語感覚やコミュニケーション能力は同じ価値観を共有する人とだけでなく、さまざまな価値観を持った人とコミュニケーションせざるをえない経験を積み重ねていく中で培われます。
直接顔を合わせて話すことももちろん大切ですが、書物は直接会えない人とも時空を超えて対話することができます。読書は文章を磨くうえで欠かすことのできない王道といえるでしょう。
使いこなせる言葉が増えて、ボキャブラリーの引き出しが豊かになれば、型どおりのスタンダードな文章を自分らしい言い回しにアレンジすることも可能になります。これが初歩段階から一歩抜け出た次の段階です。
この頃になると、部下が作成した文書を添削する仕事も増えてくるでしょう。そのときに大切なのは、まずいいところを探して褒めることです。「型はできているね」「なるほど、この表現はいいね」
「この言い方ならお客さんも喜ぶだろう」と3つぐらい褒めてから、「でも、ここは通じにくいかもしれないね」と一つ注意するぐらいがいいバランスです。褒められて自信がつけば、そこを足がかりにして、部下の力も伸びます。もしも褒めるところが1つもないレベルなら、まずはお手本を見せるところから始めなければなりません。
部下が書いた文章の中に思いもよらない新鮮なフレーズを発見したり、マンネリになっていた自分の言語感覚を見直すきっかけになることもあると思います。文章に100パーセント正解はありません。上司といえども、常に学び続ける姿勢が必要です。
●お足元の悪いところ……天候が悪い日の訪問をいたわる慣用句。「~、お運びいただき恐縮です」。
●お持たせですが……手土産の茶菓子などを、持ってきた本人に出すときに添える一言。
●お相伴にあずかります……目上の人からの誘いを受けるときに。「ご相伴」でもいい。「お言葉に甘えて、~」。
●力を尽くします……年齢や地位が上がると、「頑張ります」がそぐわない場合も多い。「お役に立てるよう、~」。