「今、式を挙げなければいけない」と決断

2月に入り、徐々に感染者数は増えていった。2月25日、政府は新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を表明し、風邪症状がある場合の休暇取得、テレワークや時差出勤の推進、イベントの開催の必要性の検討を要請。2月27日には、全国の小中高・特別支援学校に3月2日から春休みまでの休校を要請した。この時、安倍晋三首相は、「ここ1~2週間が極めて重要な時期だ」と発言していた。

松尾さんは「不安な気持ちはあったけれど、安倍首相は『ここ1~2週間が重要な時期』と言っていたので、収束に向かうと思っていました。アルコール消毒液の設置やマスクの配布など、当日の感染防止対策が必要だと思っていた程度です」と振り返る。

状況は流動的だったが、3月中旬、夫妻に開催を決意させる出来事が起きた。新婦の父親にガンが見つかったのだ。松尾さんは「絶対に、今開催しなければならない」と決意を固めたという。

都知事の「外出自粛要請」でパニックに

だが、それから状況はどんどん深刻化していった。3月25日、小池都知事が記者会見を開き、週末の「不要不急の外出自粛」を要請。このニュースを聞いて、松尾さんは大きく決意が揺らいだという。

「ちょっとしたパニックになりました。90人規模の式を開催してもいいのか、それとも延期するべきなのか。お義父さんのことがあったので、何を基準に判断すればいいかわからなくなりました」

松尾さんを戸惑わせたのは「自粛要請」という言葉だった。結婚式が「禁止」されているわけではないが、開催は感染者を出すリスクがある。出席を自粛する招待客も出てくるだろうし、当日、東京がどんな状況になっているか予想もつかない。だが、新婦の父親の病状がこれからどうなるかもわからない。もしものことがあれば、式の延期を後悔するかもしれない。夫婦で悩み続けた。