抗菌作用、洗浄作用、消化の手助け……。あまり注目されないが、実は口腔内の健康を保つのに必要な存在が唾液だ。一方で、唾液分泌を促す「酸っぱいもの」を取りすぎるとリスクもあるという。唾液の不思議に迫った。

唾液の分泌量は健康のバロメーター

前項の検診以外で今ある歯を守る生活習慣をお伝えしよう。ポイントは「唾液力」だ。「老化」を考えたとき、目なら白内障、耳なら難聴のように、口は「乾燥」がキーワードとなる。唾液の分泌機能が低下し、口が渇くことを「ドライマウス(口腔乾燥症)」といい、虫歯や歯周病のリスクを高める。唾液にはさまざまな抗菌作用を担う物質が含まれ(表)、歯の修復作用を担う働きがあるのだ。食事のたびに口の中が酸性に傾き、歯のエナメル質が溶ける「脱灰(歯のエナメル質が溶け始める状態)」が起きるが、唾液は歯から溶け出したものを元に戻す「再石灰化(溶けた歯を唾液の力で元に戻す)」を助ける。

▼のみ込みやすくするだけではない実はこんなにある「唾液の働き」
◎消化を助ける
唾液中の酵素がデンプンを分解し、胃で消化しやすい状態に
◎のみ込みやすくする
唾液中のムチンが食べ物を湿らせ、なめらかにする
◎洗浄作用
食べかすを洗い流し、口臭を抑える
◎味覚を感じる
食べ物の中の味物質が唾液に溶け、舌と反応し、甘いなどの情報を脳へ伝える
◎活性酸素を減少させる
食べ物内の発がん性物質がつくり出す活性酸素を分解する
◎老化防止
唾液中のパロチンは、筋肉や骨の発達を促進する

※「公益財団法人8020推進財団」パンフレットより