服部教授も「鉄筋コンクリートのビルでもヒビが入っていないか、定期的にチェックするでしょう。あれと同じです。定期的に診察を受ければ大規模でなく、小規模修繕で済みます」と話す。それは高齢になっても同様だ。服部教授らが仙台近郊に住む高齢者を対象に調査した結果、歯の本数が20本を切ると要介護者となる確率が上昇した。そして注目すべきは、同じ20本以下のカテゴリーでも定期的に歯科受診している人は、そうでない人よりも要介護の発生率が抑えられていたのだ。かかりつけの歯科医がいるか、何かあったときに相談できる場所があるかどうかが重要という。

「パパパパ……」「タタタタ……」と練習

近年は歯の本数だけでなく、「口の衰え(=オーラルフレイル)」も新たに注目されるようになった。東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授はオーラルフレイルにつながりやすい6項目をチェックリストにしている(表)。

オーラルフレイル・チェック

滑舌が衰える、食べこぼしが増える、汁物などでむせる、歯ごたえのあるものが噛めなくなっているなどが初期のサインだ。舌や唇の力は「パ」「タ」「カ」のいずれかを1秒間に6回以上言えるかどうかで測ることができる。口まわりの筋肉を使うためにも、ぜひ30代、40代のうちから、時折「パパパパ……」「タタタタ……」と練習したい。

老親世代でオーラルフレイルに該当してしまうと、口腔機能が正常の人と比べて死亡や要介護認定のリスクが2倍以上。誤嚥性肺炎などの疾患も発症しやすくなる。やはりかかりつけの歯科医でのメンテナンスやチェックが欠かせない。

歯周病も、静かに少しずつ進行していく。「歯が健康な人」と、「歯周病初期で歯を支える骨が溶け始めた人」の見た目は変わらない。しかし10年後には圧倒的に差が出るのだ。

読者には「何か症状が出たら歯科へ」という意識を改め、定期検診で口腔機能をチェックし、虫歯や歯周病になりかけているような“危険な芽”を摘む習慣をぜひ持ってほしい。