ストレスの多い現代では唾液分泌が低下しやすい

唾液の分泌量は若さと心身の健康のバロメーターといってもいい。健康な成人は一日に約1.5リットルの唾液が分泌されるが、ストレスの多い現代では唾液分泌が低下しやすい環境という。鶴見大学歯学部の斎藤一郎教授がこう話す。

「唾液腺は自律神経の支配を受けています。自律神経には活動時に優位となる『交感神経』と、リラックスや安定の働きをする『副交感神経』があり、一日のうちに交互に優位になります。唾液は副交感神経が優位のときに分泌されやすい。そのため、ストレスや緊張が高まって交感神経が優位になると、唾液の分泌が止まってしまうんです」

ストレスを受けると唾液の分泌が止まり、口が渇く。そしてストレスによって血圧が上がったり、眠れなくなるなどの症状が起き、降圧薬や睡眠薬、抗不安薬などの薬が必要になる。その薬の副作用でさらに口が渇く、という悪循環に陥ってしまう。

「唾液の分泌が少なくなると細菌が増殖して“臭いのもと”がたくさんつくられ、口臭も強くなります」(同)

こまめに口を湿らせたり、水分を補給しよう。「オクラや納豆、山芋、里芋など、ぬるぬるした食品を取ることで口の中が保護されます」と望月氏。王教授は「口の中の乾燥感を改善する漢方薬『白虎加人参湯』や『五苓散』」を提案してくれた。医師から処方してもらうのがベストだが、市販薬でも購入できるため、口の渇きに悩む人は試してみてもいい。

一方で口腔内の血流を悪くする「喫煙」や、脱水症状を起こしやすい「アルコール」はほどほどに。

そして最も大切なことは、食べ物をしっかり噛むことである。

「一食あたり約3990回噛んでいたといわれる弥生時代と比べて、現代人は平均620回しか噛まないといわれます。料理をするとき、食材を大きめに切り、歯で噛みきるようなイメージで。ごぼうなどの根菜類や煎り大豆、りんごなど、意識して硬いものを食べるのもいいでしょう。適度にガムを噛んだり、酸っぱいもので唾液腺を刺激したり、出汁などの旨味成分を食することが大切です」(望月氏)