体育会系営業の絶対的自信とは?

2010年銀座で限定オープンした「エクストラコールドバー」は、今年新たに大阪と名古屋にオープン。銀座店は連日行列しないと入店できないほどの人気を継続している。

加えて社を挙げての震災支援策の一環として被災地にエクストラコールドのキャラバンカーを派遣。避難生活を送っている方たちや、ボランティアで汗を流している人たちへの「癒やし」を現地で提供する予定である。

まさに飛び道具として全面プッシュの勢いだが、それには売り上げ増への確固たる裏付けがある。

「4月に始めて以降、毎月売り上げは10%以上伸びています。杯数ベースですと、2010年5月は968杯で、今年は1127杯ですから16.4%増ですね。震災後、軒並み各業態、店舗とも売り上げを落としたなかでの10%以上の伸びですから、本当に救われている、というのが実感です」

蒲田駅東口の居酒屋「宮崎地鶏鶏夢・浦田店」の統括店長である稲田健一郎は、ほっとした口調で、その効果を語る。

(左)<strong>アサヒビール東京統括支社・南支店・営業担当課長 阿部孝弘氏</strong>、(右)<strong>蒲田駅東口「鶏夢」店長 稲田健一郎氏</strong>。

(左)アサヒビール東京統括支社・南支店・営業担当課長 阿部孝弘氏、(右)蒲田駅東口「鶏夢」店長 稲田健一郎氏。

エクストラコールドは、マイナス二度という状態でビールを提供するため、サーバーは通常の生ビールよりも大掛かりになる。鶏夢は間口も狭く、20坪34席という小さい店舗だけに、設置には困難が伴った。

アサヒビール東京統括支社・南支店・営業担当課長の阿部孝弘が「鶏夢」におけるエクストラコールド導入を推し進めたキーパーソンだ。

かつてアメフトのアサヒビールシルバースターのキャプテンを務めていたという男は、がっちりとした体に優しげな目が光る、体育会系営業マンだ。自身「進化したスーパードライ」については、絶対的な自信を持っていたという。

「店長さんがスーパードライが大好きだ、という情報を販売店さんから事前に得ていました。これ以上の強みはないな、と思ったのが正直なところですね。あとは当然エクストラコールドという強い商品を武器にしていけるので、これはもう鬼に金棒だなという気持ちが半分ありました。ただ、お店のスペースが厳しいので、そこを解決するにはどうすればいいかな、という気持ちも半分ありました」

サーバーメーカーに直接交渉などをしながら、「かなり苦しかった」という工事を経て、エクストラコールドは「鶏夢」の切り込み隊長としてすぐに機能し始める。

「集客の弱かった17時から19時のハッピータイムに、エクストラコールドを300円で提供しています。データはありませんが、効果は確実に肌で感じますね。その時間にひたすら飲むというお客様もいますから。あとは客層もそれこそ40代の男性から、若い女性まで幅広くいらっしゃるのも特徴です。いままでカクテルを飲んでいたような女性が、苦みがないから『おいしい、おいしい』と飲んでくれますね」

と、稲田は年代性別を問わない強い集客力をべた褒めしたあと、こう続けた。

「サマータイムに合わせて、ハッピータイムを16時からに改めました。本当に暑くなってこそのコールドビールですから、これからが本番です」

営業マン冥利に尽きるといった表情で、阿部が大きくうなずいた。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(小倉和徳、奥谷 仁=撮影)