申請が通れば1年間も納税を伸ばせる

「今までも納税が苦しい時には、1~2カ月納付を遅らせたり、分割納付したりしていたから、わざわざ申請をするのも面倒だ」という方がいるかもしれない。これは単なる滞納をしていたに過ぎず、納税猶予の措置を受けていたわけではない。税務署が本腰を上げれば滞納者として取り扱われてしまうことになる。しかし、今回の納税猶予の取扱いは、審査が通れば以下のような措置が受けられるのだ。

①1年間の猶予が認められ
②猶予期間中の延滞税が軽減され
③財産の差し押さえや換価(売却)が猶予

しかも、担保の提供が明らかに可能な場合を除いて、担保は不要となる。

さらに「個別の事情」に該当すれば、前述のような要件とは別に納税の猶予が認められる。例えば、既に別の国税で納税の猶予を受けている場合には、前述の4つの要件を満たせないため、審査で猶予は認められないという結論となる。しかし、以下のような個別の事情があれば、別途納税の猶予が認められる。

①災害により財産に相当な損失が生じた場合
②納税者本人または家族が病気にかかった場合
③事業を廃止し、または休止した場合
④事業に著しい損失を受けた場合

例えば、新型コロナウイルス感染症に罹患してしまった場合、休業要請に応じて店舗を休業した場合など、今回のコロナ禍により該当する場合が少なくないはずだ。

税務署の案内文書によれば、「まずはお電話でご相談を」とされている。

そもそも申告自体がまだなら延長を

また、そもそも、申告期限の延長によって納税義務の発生自体を止めておくこともできる。まだ申告をしていない場合は、まずは申告期限の延長を検討することをおすすめする。

すでに多くの方がご存じの通り、所得税の確定申告と納付期限は、例年より1カ月延びて、4月16日まで一括延長されている。これに対して、法人税などそれ以外の税目については、こうした取扱いはない。しかし、個別の延長手続(国税通則法第11条)が幅広く認められることが明らかにされている。個人の所得税についても、4月17日以降に提出せざるを得ない場合、同様に個別の延長手続が認められている。

国税庁のFAQでは、次のような例示が掲げられている。

①体調不良により外出を控えている方がいること
②平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること
③感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
④感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

例えば、企業、個人事業者、申告を依頼している税理士事務所で、担当者が感染症に感染した、患者に濃厚接触したなどで業務が停止した場合や、休業要請を受けて休暇取得を要請したり、テレワークなどを実施して作業の効率が大幅に落ち、業務が進まない場合などが該当すると考えられる。