認知症も、脳細胞の炎症という見方がある。神経学術誌『ニューロロジー』に掲載された論文によると、アルツハイマー型認知症の群とそうでない群を比較すると、アルツハイマー群ではビタミンD濃度が低い。最近はインフルエンザや花粉症、うつ病、発達障害などの発症とビタミンD濃度との関連も指摘されている。

ビタミンD濃度が高いほど全死亡率が減少する

さらにビタミンD濃度が高いほど全死亡率が減少することがわかっている。英国医師会雑誌『BMJ』で2014年、「血中のビタミンD濃度が10‌ng/ml低下すると、死亡率が16%上昇する」と発表された。ヨーロッパの全死亡の約9%、米国のおよそ12%にビタミンD欠乏が関与する、ともある。

日本での大人のビタミンD欠乏に関する大規模なデータはないが、不足している人が多いと指摘する専門家が少なくない。理由は2つあり、1つは同じようなライフスタイルで暮らす韓国で、調査対象の7割超がビタミンD欠乏症だったという報告がある。

もう1つは、日本では1975年頃まではむしろ日焼けが奨励されていたが、「紫外線ががんを誘発する」という報告があってから現在では子供の頃から徹底的に日焼け止めを塗る習慣が定着しているためだ。日焼け止めは肌の炎症を促進するというUVA(紫外線A波)だけでなく、ビタミンDを生成するUVBもカットしてしまう。

「特に妊婦さんや子供、高齢者は日光が不足しないように気をつけなければならない。妊婦さんがビタミンD不足だと生まれてくる子がアトピー性皮膚炎やアレルギー、小児喘息になりやすいことがわかってきました」(熊沢氏)

それではどれくらいの時間、日光浴をしたらいいのか。国立環境研究所らの研究チームによると、紫外線の弱い冬の12月の正午(つくば)で両手・顔を露出したと仮定した場合、22分の日光浴で必要量のビタミンD(厚生労働省の日本人食事摂取基準で示される5.5μg)を生成することができると報告されている。それを基準とし、最低でも一日20分程度と心がけたい。

ただし熊沢氏は「厚労省のビタミンDの目安量は骨のビタミンとしては足りるのかもしれないが、免疫系に働く万能ビタミンとしては少なすぎる」と話す。また日本ビタミン学会や骨粗鬆症財団も「冬なら手や顔を1時間程度日に当てること」を推奨しているため、免疫力が低下していると感じるときほど、できる限り日光を浴びることを意識しよう。

またビタミンDが豊富な食材を摂取するのも◎。ビタミンDにはD2とD3があり、植物由来のD2はきのこなどに、動物由来のD3は魚に多く含まれ、体内で実際に働くのはD3といわれる。図の表を参照に、補給しよう。

ビタミンDが豊富な魚・屋外での活動時間が増えるほど近視のリスクが下がる